(写真はイメージです/PIXTA)

キャッシュレス決済とECの普及が進むなか、消費の形が大きく変わりつつあります。この変化は中小企業、そして日本経済にどんなインパクトをもたらしているのでしょうか。このキャッシュレス化の進展が日本経済にとって追い風となるのかどうか、数字から見えてくる変化と課題を読み解きます。本稿では、ニッセイ基礎研究所の福本勇樹氏が、キャッシュレス普及の実態とその影響について詳しく解説します。

広がるキャッシュレスとECの波

2019年6月、政府は「2025年6月までにキャッシュレス決済比率(民間最終消費支出に占めるキャッシュレス決済の割合)を40%程度にする」というKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を掲げた。この目標値は、2018年の24.1%から2023年には39.3%へと上昇し、ほぼ達成された状況にある。

 

また、個人間送金サービスも急速に普及しており、2018年の83億円から2023年には1兆237億円と、わずか5年で1兆円を超える規模にまで成長した。これらのデータは、現金以外の支払い手段を利用する「キャッシュレス利用」が日本社会に深く浸透しつつあることを示している。

 

資料:内閣府、日本銀行、キャッシュレス推進協議会、日本クレジット協会のデータから作成
[図表1]キャッシュレス決済比率の推移 資料:内閣府、日本銀行、キャッシュレス推進協議会、日本クレジット協会のデータから作成

キャッシュレスとECの普及が中小企業にもたらした変化

新型コロナウイルス感染症の拡大により、物理的な現金の利用を避ける消費者が増えた。安心感のあるデジタル決済手段の利用が実店舗で普及しただけでなく、デジタルな決済手段の利用が中心となるEC(電子商取引)市場の拡大にも寄与した。

 

経済産業省によると、BtoC領域におけるECの市場規模は2018年の18.0兆円から2023年には24.7兆円へと拡大し、EC化率(全ての商取引金額に占める電子商取引市場規模の割合)も10%近くにまで上昇している。

 

筆者が特に注目しているのは、中小企業の中でも小規模な小売業で顕著に見られる収益性向上である。図表2はEC化率と売上高規模別の中小企業の収益性(売上高経常利益率)の推移を示したものだが、売上高の小さいカテゴリで収益性の改善が見られ、しかも徐々に売上高の大きいカテゴリに移行している企業がある状況が垣間見られる。

 

資料:経済産業省、中小企業庁のデータから作成
[図表2]EC化率と中小企業の売上高経常利益率(小売業・売上規模別:1,000万円超)の推移 資料:経済産業省、中小企業庁のデータから作成

 

当初は、「デジタル決済対応やECサイト構築には初期投資やランニングコストがかかり、大手企業には有利でも中小企業には負担が大きいのではないか」という懸念があった。しかし、近年は小規模事業者でも比較的低コストにオンライン販売を始められる環境が整いつつある。売上規模の小さな小売店がECを通じて販路を拡げ、事業を拡大している事例が少なからず存在するものと見られる。

 

注目のセミナー情報

【事業投資】5月31日(土)開催
驚異の「年利50% !?」“希少価値”と“円安”も追い風に…
勝てるBar投資「お酒の美術館」とは

 

​​【国内不動産】5月31日(土)開催
推定利回り~10%かつキャピタルゲインも狙える!
一口200万円台から投資可能「所有権付き別荘投資」
新しいオーナー制度「COCO VILLA Owners」の全貌

次ページ決済のデジタル化は経済成長を後押しするか

※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2025年03月26日に公開したレポートを転載したものです。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧