決済のデジタル化は経済成長を後押しするか
筆者が気がかりなのは、デジタル決済やEC化の拡大が、果たして長期的な経済成長にどこまで寄与しているのかという点である。例えば、キャッシュレス決済が急伸している一方で、GDP(支出面)の構成項目の一つである民間最終消費支出の伸びはそこまで顕著ではない(図表3)。
国内のデータ獲得競争が激化したなかでも、オフライン(実店舗)からオンライン(EC)へ消費の「置き換え」が進んだにすぎず、国内需要(家計消費)全体を大きく押し上げているとは言い難いことが示唆される。
こうした構図は「実店舗 vs. EC」の競合のみならず、「都心 vs. 地方」の観点でも捉えられるかもしれない。地方に拠点を持つ事業者が、ECを通じて都心の消費者を取り込む動きが増え、価格競争力や商品差別化に成功するケースも聞かれる。一方で、都心の小売店がその分売上を奪われるような形になれば、やはり全国ベースで見ると消費のパイが大きく変わらないことも考えられる。もちろん、これらは今後さらに地域別・業態別のデータを検証していく必要はある。
実店舗×ECで生み出す「次の需要」
では、決済デジタル化を本当の意味で新たな需要や長期的な経済成長につなげるには、どのような施策が求められるのか。筆者は、決済デジタル化によって業務の省力化を進めつつ、実店舗とECの強みの両面を生かし、消費者との関係を強化することが重要だと考える。その鍵となるのが、実店舗での体験を通じてECへのリピート購入を促す仕組みの構築である。
例えば、インバウンド需要に対する体験型のマーケティング手法が有効だろう。訪日観光客が実店舗で商品やブランドの魅力を体験した後、帰国後もECを通じて定期購入してもらえる仕組みを整えることで、家計消費の単なるシフトにとどまらず、海外からの新たな需要も取り込み、純輸出の増加を通じた成長が期待できる。
キャッシュレスやECが国内外の新たな顧客接点や購買行動から需要を生み出す手段と認識されれば、経済成長につながる大きなインパクトが生まれるのではないか。キャッシュレス決済やECの利用が一般化したなかで、次のステップを見据えた戦略が企業や自治体、政策当局に求められている。
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