(※写真はイメージです/PIXTA)

老後資金に大きな不安はなく、住宅ローンも完済済み――。世間から見れば「安泰の老後」を送っているように見えるシニアは少なくありません。しかし、生きがいだった仕事が終わったあとに待っているのは、想像以上に長く、そして静かな時間。68歳男性の事例から、退職後の孤独と「シルバーモンスター」化の背景を見ていきましょう。

食べて、寝て…繰り返される同じ日々

「確かにお金はある。でも、長い老後、それだけじゃ時間を持て余してしまうんです」

 

神奈川県内で妻と暮らす元会社員の榎本隆一さん(68歳・仮名)は、大手メーカーを定年退職後、65歳まで再雇用で勤務。現在は夫婦合わせて月26万円ほどの年金を受給しています。

 

自宅マンションのローンは完済済みで、預貯金は実に6,000万円超。老後不安とは無縁の生活です。しかし、現実の日々は、あまりに退屈なものでした。

 

朝起きて食事をし、ワイドショーを観る。昼食を食べたらソファで昼寝。夕方になればまたテレビを眺めながら夕食、そして気づけば1日が終わっている――。

 

「食べて、テレビ観て、昼寝して、また食べる。それの繰り返しですよ」

 

現役時代、隆一さんは仕事一筋。趣味らしい趣味はありません。子どもたちも独立し、やることのない時間だけが残されていました。妻は昔からの友人がおり、隆一さんと一緒に行動する気はありません。

時間を持て余す老後にハマった「親切な指摘」

そんな隆一さんが、持て余す時間を充てるになったこと――それは、店や企業への“親切な電話やメール”でした。

 

きっかけは、新しく買った家電製品の使い方がわからなかったこと。コールセンターに問い合わせると、親切に答えてくれたうえ、こんな言葉も添えてくれました。

 

「貴重なご意見ありがとうございます」
「ご指摘いただき感謝いたします」

 

その言葉が心地よかったといいます。コールセンターの担当者は、自分から電話を切ることが基本的にありません。隆一さんは、ちょっとした疑問や不満を持つと、「これは相手のためになること」と、労をいとわず電話をしたり、メールを送るように。まるで日課のようになっていきました。

 

ところが、次第に自分が尊重されることに目的が変わっていきます。少しでも対応が気に入らないと「こっちは客だぞ!」 「責任者を出しなさい」。相手が慌てて謝罪すると、「わかったなら、いいんだよ」――。上から目線で許すことで、気持ちが満たされました。

 

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