企業のマーケティングや営業にもサステナビリティ変革の足音…34年ぶりのマーケティング定義刷新に見る地方創生への期待

企業のマーケティングや営業にもサステナビリティ変革の足音…34年ぶりのマーケティング定義刷新に見る地方創生への期待
(写真はイメージです/PIXTA)

日本における人口減少が加速するなか、地域社会の持続可能性を確保するための政策が求められます。そこで注目されているのが「地方創生2.0」。地域の課題解決へ向けたこの政策は、どのような内容なのでしょうか。本稿では、ニッセイ基礎研究所の小口裕氏が、地方創生における官民連携の意義や、民間企業の果たす役割について詳しく解説します。

定義改訂の背景にあるもの

この改訂の背景には、日本経済・社会を取り巻く環境の大きな変化がある。当初の定義が制定された1980年代から90年代初頭は、1989年のベルリンの壁崩壊や1991年のソビエト連邦の崩壊を契機に冷戦の緊張が緩和され、グローバルな経済統合が進展していた時代であった。

 

1989年には三菱地所が米国ニューヨークのロックフェラー・センターを買収、同年12月には日経平均株価が38,915円を記録するなど、日本経済はバブル経済の最終局面を謳歌し、量的な成長志向の色濃い時代であった(図表5)。

 

資料:内閣府「国民経済計算」、IMF“World Economic Outlook”より作成
[図表5]主要国1人当たり名目GDP推移(単位:USD) 資料:内閣府「国民経済計算」、IMF“World Economic Outlook”より作成

 

1990年代定義~サステナビリティより「成長の加速」が優先された時代

無論、今回の改訂に見られるような「サステナビリティの視点」が当時まったく欠如していたわけではない。マーケティングとサステナビリティとの関係は古く、1970年代に企業の社会的責任(social responsibility)の主張を背景にソーシャル・マーケティング※13が登場した時期まで遡る。

 

その後、1987年に国連が公表した報告書「Our Common Future」では「持続可能な開発(Sustainable Development)」※14が初めて提唱される中で、同年に採択されたモントリオール議定書では、フロン類の生産・使用削減が国際的に合意されている。

 

一方で、国内では多重多額債務被害など消費者問題が深刻化していた時期でもあり、1990年定義の「公正な競争」という表現で示されている通り、当時のマーケティングは、競争を通じた利潤追求のみならず企業の社会的責任や社会利益の追求を取り入れようとする姿勢も見られていた。

 

しかし、当時の日本経済は「成長を加速」することが期待され、求められていた時代でもあり、市場の持続可能性以上に、市場成長の加速が優先されていた点は否めない※15

 

※13 ソーシャル・マーケティングとは、企業の対市場活動であるマーケティングに、プロフィット・シンキングという、利潤追求だけでなく、より大きく社会的責任を課し、社会利益追求の考え方を導入していこうという考え方。 Lazer, W., “Marketing`s Changing Social Relationships,” Journal of Marketing, Vol. 33, No. 3, 1969, pp. 3-9.
※14 1987年に国連の「環境と開発に関する世界委員会(WCED)」によって発行された。この委員会は、グロ・ハーレム・ブルントラント元ノルウェー首相が委員長を務めたことから、「ブルントラント委員会」とも呼ばれている。
※15 浅井慶三郎, 宇野政雄, 坂井幸三郎, 疋田聰, 濱口秀夫, 馬場房子. (1991). JMAマーケティング新定義発表とシンポジウム: 拡大するマーケティング概念と多元的市場創造. ジャーナルフリー, 11(1), 60-66.

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2025年2月14日に公開したレポートを転載したものです。

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