マーケティングや営業を通じたCSV創出
三大都市圏を除く地方ブロック市場は、民間最終消費支出ベース(2020年)で全国の約4割以上(42.3%)を占めており(図表4)、人口減少傾向にあるこれらの市場とどう向き合うか、は企業にとって課題である。
これらの市場を地方創生2.0において持続的なものにするためには、地域社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを「同期」させながら、単なる地域への社会貢献活動にとどまらず、持続可能性に配慮したバリューチェーンの構築や商品・サービス開発を行う必要がある。
さらに、マーケティングや営業などの顧客接点の事業活動を通じて市場の顧客基盤を涵養※8し、企業の経済的利益と地域社会の利益を相互に強化する「共有価値(Creating Shared Value, CSV)」※9の創出を目指していく必要がある。
企業による社会貢献活動の成果の一つは、自社のブランドイメージの向上とカスタマーエンゲージメントの強化と言われる。先の経団連のアンケートでも、社会貢献活動のプラス影響を実感する内容として「ブランディング戦略」(68.7%)、「レピュテーション(評判)の獲得・向上」(67.3%)が上位※10となっている。
そして、その活動を担うのが、顧客(地域社会・地域市場)接点を担うマーケティングや営業活動※11である。
※9 企業が社会的問題を解決しながら同時に自らの経済的価値を創出するという考え方。CSVは、企業の社会的責任(CSR)とは異なり、企業の経済的利益と社会的利益を相互に強化することを目指すものとされる。Porter, M. E., & Kramer, M. R. (2011). Creating shared value: How to reinvent capitalism—and unleash a wave of innovation and growth. Harvard Business Review, 89(1/2), 62–77.
※10 日本経済団体連合会. (2025)アンケートの「社会貢献活動のプラスの影響の実感度合い」の「強く/やや実感」の合計(%)である。
※11 先行研究では、サステナビリティを実践する上でマーケティングが重要な役割を果たし、特にブランドがサステナビリティの価値を促進することを示唆している。V. Kumar, Angeliki Christodoulopoulou,2014.“Sustainability and branding :An integrated perspective” Industrial Marketing Management 43,6-15
34年ぶりのマーケティング定義改訂とその背景
変革期を迎えたマーケティングの現在地
特に現在、マーケティング活動は大きな変革期を迎えつつある。日本のマーケティング業界を代表する団体である公益社団法人日本マーケティング協会が2024年1月に、持続可能性への関与を強化することを念頭に、1990年以来34年ぶりに「マーケティングの定義」を刷新して公表※12した。
今回、改訂された定義は、「(マーケティングとは)顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセス」である。1990年制定の定義では、「(マーケティングとは)企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動」であった。
※12 公益社団法人日本マーケテイング協会「34年振りにマーケティングの定義を刷新」(2024年1月25日プレスリリース)

