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婚前契約は「婚姻生活中」の夫婦間の取り決めも設定できる
結婚する前から別れた場合を想定することに、違和感を覚える人もいるかもしれません。別れる前提の契約を結ぶというのですから、心理的な抵抗感もあるでしょう。実は婚前契約にはもう1つの側面があり、そちらも非常に重要です。それは婚姻生活中の夫婦間の取り決めができるということです。
具体的には、家事の分担や子どもが生まれたときにどちらが面倒をみるかなど、夫婦生活を円満に送るために必要なことを決めることができます。極論、婚前契約の中で書いてはいけないことというのは原則存在しません。結婚後の夫婦生活を円満に送るための約束事が互いにあれば、それらを盛り込むことができます。
日本では婚前契約というと、離婚ありきの契約というマイナスのイメージが先行しがちです。しかし、実際のところは円満な夫婦生活を送るための前向きな内容を盛り込めるため、結婚するにあたって事前に結んでおくことをおすすめします。
かつて、結婚「後」の契約は意味がなかったが…
婚前契約は結婚「前」に結ぶ契約です。では結婚後に締結する「婚後契約」は可能なのでしょうか? 婚前契約、婚後契約どちらも有効な契約ではあります。しかし、いままでは婚前契約でなければならない理由がありました。
以前は民法754条に夫婦間取消権という規定が存在しました。これは、夫婦間の契約の取消権でした。これにより結婚後に夫婦間で交わされた契約に関しては、婚姻期間中はどちらかが嫌だといえば取消が可能だったのです。そのために婚後契約を結んだとしても、無効になってしまう可能性がありました。
そもそも、なぜこのような権利が規定されていたのか。これには、日本の慣習が影響しています。日本には「法は家庭に入らず」ということわざがあります。そのため、夫婦間で交わした契約の法的拘束力に関しては、一般のほかのケースに比べて弱いものにしよう、という考え方で設定されていました。
このようにいつでも契約を取り消せる夫婦間取消権ですが、そもそも裁判事例の蓄積があまりなかったことや、夫婦関係が円満なうちしか有効でないという曖昧な部分があり、法的な安定性を欠いていました。そういった事情から、改正民法からは夫婦間取消権がなくなっています。
そのため現在では、婚前契約を作らなかった夫婦間においても、婚後契約はもっと活用されていくと考えます(※正確には夫婦財産契約の場合には、婚「前」に行う必要があります(民法755条及び民法758条1項))。したがって婚前・婚後、どちらの契約もニーズが上がる可能性は高いのではないでしょうか。

