(※写真はイメージです/PIXTA)

交通事故の被害に遭った場合でも、状況に対する認識の違いや証拠関係によっては、賠償金の支払い義務が生じることがあります。「相手が追突してきたのだから自分に落ち度はない」と思っていても、必ずしもその主張が通るとは限りません。さらに、相手方保険会社から強い姿勢で交渉を迫られると、どのように対応すべきか不安を感じてしまう人も少なくないでしょう。そこで、実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」へ寄せられた相談をもとに、自転車対自動車の事故の賠償責任と保険会社とのやりとりついて、横山令一弁護士が詳しく解説します。

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追突された側でも、賠償金は発生するのか?

相談者が自宅マンションの敷地から自転車で公道へ出ようとした際、隣接する細い道路を走行してきた自動車に追突されました。この事故により、相談者は打撲や擦り傷、頸部痛などのケガを負っています。

 

警察からは「まずは物損事故として処理するが、診断結果によって人身事故への切り替えが可能」と説明を受け、一旦物損事故として署名したうえで、すぐに病院を受診しました。

 

事故から2日後、相手方の保険会社から連絡がありました。相談者が自転車保険には加入していないと伝えると、担当者はこういったのです。

 

「当社の保険は使わず、車の修理費(約35万円)と相殺する形で処理したい。この提案を受け入れない場合、あなたにも修理費の負担が生じる可能性がある」

 

相談者としては、自身が追突されてケガを負い、自転車も壊れているにもかかわらず、費用負担を求められることに納得できません。しかし、初めての交通事故でどのように対応すべきかわからず、不安を抱えています。

 

そこで、ココナラ法律相談「法律Q&A」では次の2点について弁護士に相談することにしました。

 

(1)追突された場合でも、相手方に対して賠償金を支払う義務が生じることはあるのか。またその金額の目安はどの程度なのか。

(2)このようなケースで、弁護士に依頼するメリットはなにか。

責任の割合を決める「過失相殺」

交通事故の形態は多種多様ですが、片方だけが一方的に責任を負うという形態は、実は多くはありません。ほとんどの形態の事故は、程度の差こそあれ、事故の当事者の両方に一定の割合の責任があるとされています。

 

そして、両方にケガや物損などの損害が発生した場合、互いにその賠償をし合うことになります。このとき、事故の態様に応じてそれぞれの責任の割合を判定したうえで、相手に生じた損害に自身の責任の割合を掛け合わせることで、賠償すべき金額を算定します。このことを「過失相殺」と呼びます。

 

実務上は、この過失相殺の割合は事故の形態ごとに基準があり、その基本となる割合をもとに、個々の要素によって増減させた割合を用います。

 

この事例の事故の形態は「追突」、つまり前方を走行していた自転車に後方から走行してきた自動車が衝突した事故ですが、衝突の瞬間の位置関係だけではなく、それに至るまでの双方の動きも考慮して、責任の割合が判定されます。この事例では、道路の外の場所から道路に入ったところ、その直後に追突された、という一連の動きが考慮されるのです。

 

道路交通法上は、道路の外から道路に入ろうとする車両よりも、道路を走行してくる車両のほうが優先されます(第25条の2第1項)。そのため、追突された側の相談者にも一定の責任があり、相手の自動車に損傷があれば、自身の責任の割合に応じて賠償金を支払わなければなりません。

 

道路の外から道路に進入する自転車と道路を走行中の自動車が衝突した形態の事故では、基本となる責任の割合は自転車が4割、自動車が6割です。ただし、すでに自転車が道路に進入していたこの事例では、自動車の責任が大きくなるよう修正され、ほかに考慮すべき要素がない限り、「自転車3割、自動車7割」の責任割合になります。

 

仮に自動車の修理費が35万円であるとすれば、相談者が相手に支払うべき賠償金は、その3割である10万5,000円が目安となります。

 

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