ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中!
『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【基本編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)
『富裕層が知っておきたい世界の税制【カリブ海、欧州編】』
矢内一好 (著)+ゴールドオンライン (編集)
『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【実践編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)
シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!
「今日で辞めます」は法律上許される?
相談者は小さな飲食店を経営しており、2人の従業員を抱えています。先日、勤務態度や接客態度が悪かった従業員1人に注意したところ、「働くのが嫌になったので今日で辞めます」と逆ギレされ、その従業員は仕事を放棄し、退職願を書いてそのまま帰宅してしまいました。
そのせいで、その日の予約はすべてキャンセルせざるを得なくなり、お客様に迷惑がかかりました。この従業員は契約社員で、契約期間の残りはまだあります。従業員が突然いなくなったため、相談者自身がその従業員の本来すべき仕事を代わりに行ったり、採用活動を始めたりと手が回っていない状況です。
従業員に任せていたビラ配りも、相談者が代わりに対応することになりました。本来であれば別の仕事をする予定でしたので、金銭的な損害も発生しています。そこで、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の2点について相談しました。
(1)この従業員は一方的に退職願を出し、勝手に帰宅しましたが、このことは法律上許されるのか。
(2)相談者は従業員に対して、「役員報酬×ビラ配り日数分」などの損害賠償を請求できるのか。
期間途中の辞職、損害賠償請求の可能性は?
労働者の一方的な意思に基づく労働契約の解約のことを「辞職」といいます。期間の定めのない労働契約においては、労働者は2週間の予告期間をおけば、いつでも辞職が可能とされています(民法627条1項)。
一方で、期間の定めのある労働契約については、民法628条において、「やむを得ない事由」がない限り、期間途中の辞職はできないとされています。また、同条に基づき、やむを得ない事由が労働者の過失によって生じたものであるときは、使用者に対して損害賠償の責任を負う可能性もあります。
今回のご相談では、従業員が契約社員であり、契約期間がまだ残っているとのこと。そのため、辞職の理由に「やむを得ない事由」が認められない場合には、従業員に対する損害賠償請求が認められる可能性があります。もっとも、損害賠償を請求するにあたって、その損害の程度や辞職と損害との因果関係などを立証する必要があります。
今回の事例において、ビラ配り業務にかかる代替費用(例:役員報酬)は、会社に発生した損害として認められるかが争点となります。このような請求を検討する場合には、できるだけ早く弁護士に相談することをお勧めします。
なお、労働基準法では、1年を超える有期労働契約の場合で、契約の初日から1年を経過した日以降であれば、民法628条の規定にかかわらず、労働者はいつでも退職することができる(労基法137条)と定められています。この点もふまえて、適切な対応を検討しましょう。

