(※写真はイメージです/PIXTA)

相続人が認知症などの理由で相続手続きが難しい場合には、家庭裁判所に申し立てることで「成年後見制度」を利用できます。しかし、時には理解を得られないこともあるケースもあるようです。そこで今回は、実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、成年後見人が必要な人が相続人にいるケースでの手続きの進め方と、成年後見制度の概要について、『弁護士だからわかる!できる!あんしん相続 手続きの「めんどくさい」「わからない」「ストレス」が消える!』(Gakken)の著者である古山隼也弁護士が解説します。

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勝手に自宅の解体や売却の話を進める兄や姉

相談者には叔母がいます。叔母は現在寝たきりで、認知症傾向があり、目が見えない状況です。先日、叔父が亡くなり、相続問題と向き合う形になりました。叔母には実子がおらず、相続人は叔母と代襲相続人3人(相談者とその兄、姉)です。今後、相談者が申立人となり、成年後見制度を利用する予定でいます。

 

そんななかで、相談者の兄と姉は叔父が亡くなったことを知ってから、勝手に自分たちで専門家に相談し、自宅の解体や売却の話を進めています。兄と姉は相続権のある自分たちに決める権利があるといい、「成年後見制度を使うのは卑怯だ」と主張してきました。

 

叔母はいつか代襲相続人たちが自分のもとに押しかけてくるのではと怯えています。成年後見制度について深く理解できているかはわかりませんが、承知しています。そこで、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の3点について相談しました。

 

(1)もし成年後見制度の申立てが認められた場合、どのように遺産分割協議が進んでいくのか。

(2)もし成年後見制度の申立てが認められなかった場合には、どのように遺産分割協議を進めるべきか。

(3)相続手続きが終わると、成年後見人の仕事は終わるのか。

自宅を解体・売却するには全員の同意が必要

兄と姉は勝手に自宅の解体や売却ができない

叔父が所有していた自宅は遺産にあたります。それでは、遺産分割協議をする前に、兄と姉は叔父の自宅の解体や売却をすることができるのでしょうか。

 

民法は「分割前の遺産は相続人の共有である」としています。したがって、相談時点において叔父の自宅は相続人全員が共有していることになります。相続人の共有状態にある遺産の処分は、相続人全員の同意がなければすることができません。そして、建物の解体や土地の売却は「処分」にあたります。つまり、兄や姉は、叔母と相談者の同意なく、勝手に自宅の解体や売却をすることは許されません。

 

遺産分割協議は相続人全員で行わなければならない

遺産分割協議は相続人全員によって行われなければなりません。もし相続人が1人でも欠けてしまうと、遺産分割協議は無効になってしまいます。したがって、兄と姉だけで遺産分割をすることはできません。叔母と相談者を含める必要があります。

 

そして、相続人のなかに認知症で判断能力がなくなっている人がいる場合、その人の行為は無効ですので、そのまま遺産分割協議をすることはできません。そのため、あらかじめ成年後見人をつけることになります。叔母は「認知症傾向」とされているものの、どれくらい判断能力がなくなっているかわかりません。もし、叔母に遺産分割できるだけの判断能力がなければ、遺産分割協議をする前に、まずは成年後見人をつける手続きをとらなければなりません。

 

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