叔母から相続した自宅は借地権
70歳の憲一さんは、ずっと独身だった叔父(母親の弟)と自宅が近く、母親からも頼まれていたことから、妻と一緒に叔父の身の回りの世話などをずっとしてきました。母親のきょうだいは4人で、長男、長女、次女(憲一さんの母親)、次男(叔父)という構成。きょうだいのなかでも特に母親と叔父は仲がよかったといいます。
しかし母親はすでに亡くなってしまい、長男、長女も亡くなり、最後の叔父が昨年、亡くなったのでした。
いちばん身近な立場で相続を引き受ける
憲一さんには姉もいますが、伯父の一番近くに住んでいるのが憲一さんということで、母親からも叔父の面倒を看るようにと言われてきました。叔父は独身で、配偶者や子どももいないため、憲一さん夫婦が子ども代わりに定期的に叔父のもとへ行き、身の回りのことなどサポートをしてきました。
叔父の相続人はきょうだいですが、すでに全員亡くなっているため、代襲相続人は、長男の子1人、長女の子2人、次女の子(憲一さんと姉)2人の計5人となります。
長男の子、長女の子は離れたところに住んでいるため、ほとんど行き来はありません。親族の法事で会う程度で、叔父の家に来たこともないほどです。
憲一さんの姉は、結婚前は母親と一緒に叔父のところへは行き来をしてきましたが、結婚後はほとんど行き来ができず、結果的には叔父の面倒を看てきたのは憲一さん夫婦ということです。
財産が変わっても公正証書遺言の作り直しは不要
叔父は自分が亡くなった後は憲一さんに財産を相続させたいということで、公正証書遺言を作成されています。夢相続で叔父からの意思を確認したあと、証人となり、公正証書遺言を作成しました。その後、叔父には現金が多く残っていましたので、区分マンションを購入して賃貸するという節税対策にも取り組んでもらいました。
公正証書遺言の作成後ではありましたが、遺言書は「すべての財産を憲一に相続させる」という記載をしていましたので、あらたに作り直す必要はありませんでした。
叔母から相続した自宅は借地権
叔父が亡くなったのは遺言書を作成してから10年後。享年93歳でした。叔父は親から相続した自宅にずっと住んでいましたが、土地は借地でした。親の代から借りている土地ですので、相続した叔父がずっと住み続けてきたといいます。
地代は叔父が相続した当時は地主へ持参していましたが、地主も相続になり、振り込みに変わりました。地代は月45,000円です。
地代の滞納
叔父は公正証書遺言の作成時は意思確認も問題なくできていましたが、それからほどなく、地代の滞納が発覚。それがわかったのは、自宅の1人暮らしが大変になったため、叔父が老人ホームに入り、憲一さん夫婦で通帳の管理をすることになったからです。
憲一さんあが、地主のところへ叔父が老人ホームへ入ったこと、地代の振り込みは自分たちが代わりにすることなどを伝えに行った際に「叔父が地代を2年ほど滞納しているので、借地権はもうない、底地を買い取りますか?」と言われたのです。
驚いた憲一さんは早速その足で叔父にも確認し、いままでの通帳なども調べました。すると、確かに支払った形跡がありません。弁護士にも相談して、とりあえず地代を供託するよう指示を受け、滞納分から計算し、地代を供託したといいます。