借地権評価4,000万円が705万円に!? 叔父からの遺産をすべて相続した70歳男性…通帳を管理して発覚した「まさかの事実」【相続の専門家が解説】

借地権評価4,000万円が705万円に!? 叔父からの遺産をすべて相続した70歳男性…通帳を管理して発覚した「まさかの事実」【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

叔父の身の周りの世話をずっとしてきた憲一さん。(70代男性)叔父のきょうだいも皆亡くなり、遺言書には「すべての財産を憲一に相続させる」と記載されました。しかし、作成からほどなくして叔父の地代滞納が発覚し、さらには買い手が見つからない事態に…。本記事では、憲一さんが取るべき対応方法について、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。

借地権の地主への売却について弁護士からの回答

顧問弁護士からの回答は下記のとおりです。

 

「地主に買い取るよう請求する権利はございません。そのため、借地権について買受人が現れない場合に、借地権を手放し地代の負担から解放される方法としては地主側が提示した条件に応じざるを得ないと思われます。結局、借地権の相続評価価格も買受人がいなければ絵に描いた餅ですので、4,000万円という価格を基本において地主と交渉をすることは難しいと考えます。

 

他方で、何とか借地権の買受人が見つけられた場合は、地主がその譲渡を認めない場合には、第三者への譲渡について地主の承諾に代わる許可を求めて裁判所に対して申立てをすることができます。その場合には裁判所に適正な価格を判断してもらうことが可能です。

 

裁判所が地主の承諾に代わる許可を与える場合は、地主に対して名義書換手数料として借地権価格の10%程度を支払うよう要求されることが多いです。

 

また、同申立てに対して、地主が優先譲渡の申立てをしてきた場合(地主に優先して賃借権を譲渡するよう請求してきた場合・介入権の行使)は、地主が借地人に対して支払う相当対価を判断することになります。

 

その場合、建物譲渡代金と土地借地権の譲渡代金から名義書換手数料を差し引いた価格(借地権価格の約10%)が相当価格とされることが多いです。

 

もっとも、借地権の価格が賃貸借契約当初と比較して上昇している場合は公平上地主に分配される部分を清算して借地権価格が決められることになります(したがって、第三者に譲渡される価格よりも低くされることが多いです)。

 

以上のとおり、借地権の買受人が見つけられない場合は、地主に対して優位に立てないので、地主側の要求に応じざるを得ないと思われます。

せめてもの相続税節税。時価申告をすれば相続税はかからない!

憲一さんの叔父の借地権はいくつかの不利な要因が重なり、4,000万円の評価ではなく705万円が時価ということで、相続税の申告を担当する税理士と相談し、時価申告することにしました。せめてもの節税になるからです。

 

結果、相続財産は4,205万円となり、基礎控除の範囲内。相続税は0ということになりました。

 

憲一さんの場合は一時期地代を滞納したことで借地権が消滅したと指摘され、また、地形により、買い手が見つからないということが重なって理不尽な結果となりました。借地は自分の決断だけでは進められないため、できれば解消しておく、買い取っておくなど、早めの決断が必要だと言えます。

 

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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