実印だと思って押した印鑑が、それと似た認印で実印ではなかったために、法務局などから申請が突き返されてしまうといったケースが少なくありません。本記事では、実印の管理方法などについて、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。
遺産分割協議書には実印押印、印鑑証明書を添付する
相続の際に遺言書があれば、それが亡くなった人の意思として優先されます。しかし、遺言書がない場合やあっても遺産分割法についての指定がない場合などは、相続人全員で話し合い、納得のいく分割方法を決めなければなりません。
遺産の分配を「遺産分割」といい、その割合を「相続分」といいます。遺産分割は、必ずしも法定相続分どおりに分ける必要はなく、相続人全員が納得すればどのように分けてもかまいません。
遺産分割の内容がまとまって全員の合意が得られれば、「遺産分割協議書」を作ります。この協議書は相続人全員が同意をしたという証拠になり、後の争いを回避するためのものです。そのために、「実印」を押印し、印鑑証明書を添付しなければなりません。
遺産分割協議書の作り方
遺産分割協議書の作成には、特に決まったルールはありませんが、①相続人全員が名を連ねること、②印鑑証明を受けた「実印」を押すことの2点は必須となります。未成年者や認知などで代理人を選任した場合は、代理人の実印、印鑑証明が必要になります。
〔遺産分割協議書の作成例〕
遺産分割協議書
被相続人○○○○(○○年○○月○○日死亡)の遺産については、同人の相続人の全員において分割協議を行った結果、次のとおり遺産を分割し、取得することに決定した。
1.相続人○○○○は被相続人○○○○の次の遺産を取得する。
(1)土地所在○○○市○○○町三丁目
地番○○番○○
地目宅地
地積○○○.○○㎡
2.相続人○○○○は被相続人○○○○の次の遺産を取得する。
1)○○銀行○○本店定期預金(口座番号○○○○○○○)
2)○○銀行○○本店普通預金(口座番号○○○○○○○)
3.本協議書に記載なき資産及び後日判明した遺産については相続人○○○○が取得する。
上記の通り、相続人による遺産分割の協議が成立したので、これを証するため、本書2通を作成し、各1通ずつ所持する。
令和年月日
○○○市○○○丁目○○番○号
相続人○○○○実印
○○○市○○○丁目○○番○号
相続人○○○○実印
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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