叔父の身の周りの世話をずっとしてきた憲一さん。(70代男性)叔父のきょうだいも皆亡くなり、遺言書には「すべての財産を憲一に相続させる」と記載されました。しかし、作成からほどなくして叔父の地代滞納が発覚し、さらには買い手が見つからない事態に…。本記事では、憲一さんが取るべき対応方法について、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。
相続後、借地権をどうする?
そのような経緯で、憲一さんから「叔父が亡くなったので、相続手続きをお願いたい」と委託を受けました。公正証書遺言があるので、叔父の財産はすべて憲一さんが相続します。
財産を引き受けるのは1人ですが、法定相続人は5人ですので、相続税の基礎控除は6,000万円となります。
不動産は賃貸している区分マンションと自宅の借地権。預貯金も合わせて7,500万円。大部分が自宅の借地権で、4,000万円という評価です。相続税は150万円という試算になりました。憲一さんには自分の自宅があり、叔父の家に住むことはないため、借地権を売却したいと依頼もされました。
借地権が売れない、地主の許可が得られない
叔父の住む自宅の土地は敷地延長となる旗竿地で80坪あります。けれども、侵入道路部分の幅員が1.5mしかありません。隣接する土地をあと50cm買うか、借りるかしないと、建て直しができないのです。
こうした現状があり、建売業者は二の足を踏み、買いたいと意思表示があったとしても、次は地主の承諾が必要になります。
結果、だれも購入する希望者がないという借地権になっています。地主に借地権の購入を打診すると、以前の地代の未納と現在の空き家を理由として、地代の供託金分程度で買い取るとのこと。供託金は705万円です。
4,000万円の借地権が705万円?
憲一さんと地主とは確執があり、地代は長年、法務局へ供託しています。借地権の購入希望者が現れると交渉の余地があるのかもしれませんが、買い手が見つからず。最後の方法として地主に買い取ってもらうよう伝えました。
窓口の地主側からの回答は、買取金額は供託金705万円。建物はそのままでよいが、建物の荷物は撤去し、庭の物置などもすべてきれいにすることが条件だというのです。
相続税申告の準備のため、業務提携先の税理士に評価をしてもらっていましたので、4,000万円の借地権が705万円の価値しかないということです。
これはあまりに理不尽だと業務提携先の弁護士にも相談してみました。家庭裁判所に借地非訟の申立てをして適切な価格を出してもらうことができないか? と考えたのです。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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