(※写真はイメージです/PIXTA)

9月17日から18日にかけて開かれたFOMCの会合。ここで「0.5%」の利下げが決定されましたが、先日その議事要旨が公開され、参加者のなかに「0.25%のほうが好ましい」と考えていた人が少なくなかったことが明らかになりました。FRBが“強行”したともとれる9月の利下げ。これが米国内でインフレが鎮静化しない原因にもなっていると、フィデリティ・インスティテュート主席研究員でマクロストラテジストの重見吉徳氏は指摘します。近年、アメリカが置かれている「危機的状況」について、本記事で詳しくみていきましょう。

“インフレ退治”に本気ではなかったFRB

こういうと「現在のFRBは2022年からは大幅な利上げに転じ、少なくとも一時的にはインフレ・ファイターに転じた」と言われるかもしれません。筆者はそうではないと考えます。

 

FRBは2022年の利上げ開始のあと、2023年7月の利上げ打ち止めまでのあいだに公表したすべての四半期経済見通しで「24年には利下げに転じている」との見通しを示していました。

 

[図表2]FRBの四半期。政策金利見通しと実際の政策金利
[図表2]FRBの四半期。政策金利見通しと実際の政策金利

 

金融市場は将来に関する期待を織り込んで動きます。すなわち、「いまは利上げをしていますが、すぐ先では金融緩和しますよ」との中銀による示唆は、いま実施している金融引き締めの一部を自ら打ち消します。

 

実際、今回の局面では、長短金利の逆転幅が大きくなりました。短期金利ほどに、長期金利は上がらなかったということです。

 

そして、[図表3]に示すとおり、長短金利の逆転とともに、株価は回復していきました。言い換えれば、長期金利の低下が株価の上昇を促し、株価の上昇が実体経済を刺激し続けました。

 

[図表3]S&P500と2年~10年金利差
[図表3]S&P500と2年~10年金利差

 

このように、今般の利上げ局面を通じ、FRBはインフレ抑止に「本気の姿勢」を見せていませんでした。これこそが、今日までの「ノー・ランディング」や高止まりするインフレに作用している可能性があります。

 

そして、今年8月のジャクソンホール会議で、パウエル議長は「物価安定に向けたさらなる進展に沿って、力強い労働市場を支えるためにできることはなんでもする」(We will do everything we can to support a strong labor market as we make further progress toward price stability.)と述べ、緩和バイアスの維持を強調しました。

 

また、その証として先月には「経済が堅調」でインフレの先行きに不確実性があるにも関わらず、大幅な金融緩和に踏み切りました。

 

この声明は、2012年7月のドラギ・欧州中央銀行総裁による声明を思い出させます(“Within our mandate, the ECB is ready to do whatever it takes to preserve the euro. And believe me, it will be enough.”)。

 

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