(※写真はイメージです/PIXTA)

9月17日から18日にかけて開かれたFOMCの会合。ここで「0.5%」の利下げが決定されましたが、先日その議事要旨が公開され、参加者のなかに「0.25%のほうが好ましい」と考えていた人が少なくなかったことが明らかになりました。FRBが“強行”したともとれる9月の利下げ。これが米国内でインフレが鎮静化しない原因にもなっていると、フィデリティ・インスティテュート主席研究員でマクロストラテジストの重見吉徳氏は指摘します。近年、アメリカが置かれている「危機的状況」について、本記事で詳しくみていきましょう。

「雇用の最大化」は、格差から目をそらすための“手段”

しかし、なぜ、現在のFRBは緩和バイアスなのでしょうか。

 

FRBの2つの責務を思い出せば、緩和バイアスとは「物価の安定」よりも「雇用の最大化」を志向している状況といえるでしょう。

 

これは筆者の想像に過ぎませんが、「雇用の最大化」は表向きの目標に過ぎず、FRBは金融緩和によって生じる「株価の最大化」をより重視しているのかもしれません。すなわちFRBは、為政者や大企業、その経営者たち、富裕層やエスタブリッシュメント(エリート)の側に立って行動しているのかもしれません。

 

今回の大幅な金融緩和の考えられる背景もそうですし、新型コロナウイルス・パンデミック以降、1960〜70年代にも見られないほどに裁量的な金融政策が物価と資産価格の世界的なインフレを招きました。

 

この結果、購買力と富の格差はいっそう広がり、社会の分断はさらに深まりました。

 

[図表4]人種別の保有純資産金額(中位)
[図表4]人種別の保有純資産金額(中位)

 

[図表5]世代別の保有純資産金額(中位)
[図表5]世代別の保有純資産金額(中位)

 

[図表6]学位別の保有純資産金額(中位)
[図表6]学位別の保有純資産金額(中位)

 

「雇用の最大化」は、緩和バイアスの結果として生じる所得や富の格差から目をそらすための手段かもしれません。

 

エスタブリッシュメントたちが所得や富の格差の恩恵を安定的に享受するためには、一般庶民に「時間いっぱいの雇用」とギリギリの所得と余暇を与える必要があります。我々に現在の統治体制について「考える時間」を与えないためです。

 

そして、富裕層や大企業は所得や富をさらに追求して減税や移民(安価な労働力)を求める結果、一般庶民の負担は増え、為政者は低金利を望み、最後はインフレに頼ります。

 

[図表7]米国の政府債務と富や所得の格差
[図表7]米国の政府債務と富や所得の格差

米国の民主政治は終わるのか?

今回の米大統領選挙の構図は「多様性の信奉者vs.排外主義者」というよりも、「エスタブリッシュメントvs.一般庶民」や「一般有権者vs.非合法移民」です。

 

過去1年(2024年8月時点)で米国のフルタイムの労働者は102万人減り、パートタイムの労働者は105万人増えました。また、米国生まれの労働者は131万人減り、外国生まれの労働者は124万人増えました。

 

これらは米国の一般有権者から「時間いっぱいの雇用」が失われていることを示唆します(→念のために補足すると、米労働統計局の数値に基づくと、現政権発足以降、2024年8月末までに、米国の移民は「576万人の増加」です。前政権時の同じ時期は「66万人の増加」でした。こうした数値は、誰が分断を助長しているのかの判断材料となるかもしれません。付け加えれば、移民の増加は「明日の日本の姿」でもあります)

 

これは、エスタブリッシュメントにとっての自業自得であり、アラームです(→イーロン・マスク氏は、仮に不法移民に選挙権を付与するようなことが起きれば、『スイング・ステート』がなくなって、米国が事実上の一党独裁になり、米国では民主政治が終わると危惧しています)

 

FRBは選挙を目前にして、大幅な金融緩和によって一般有権者に「時間いっぱいの雇用」を再びもたらし、対立構図の目隠しと現統治体制の維持に努めているのかもしれません。他方で、一般庶民たちは、エスタブリッシュメントたちの所業に気づき始めているようにも見えます。

 

仮に、FRBの緩和バイアスが「株高やエスタブリッシュメント自身のためではない」としても、少なくとも中央銀行が「雇用の最大化」を目指すことで、インフレや格差拡大といった統治体制の根幹を揺るがすリスクを冒している現状は極めて危ういと考えられるでしょう。

 

この世界で、自分自身の購買力や健康を守るのは自分の力のみだと筆者は感じます。

 

<<レポート全文はコチラ>>

 

 

重見 吉徳

フィデリティ・インスティテュート

首席研究員/マクロストラテジスト

 

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