(※写真はイメージです/PIXTA)

60代の姉妹は、90代の母が施設入所後、空き家となった実家不動産をどうするべきか、思いあぐねていました。2人がよかれと思い提案した相続対策を、施設の母親へ伝えたところ号泣されてしまい…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、事例をもとに解説します。

90代の母の資産、およそ1億円…父の相続時より増えたワケ

今回の相談者は、60代の佐藤さんです。将来発生する母親の相続について相談したいと、筆者の事務所を訪れました。

 

父親が亡くなってからずっとひとり暮らしだった母親も、80代後半となって体が弱ってきたことから、一昨年、自宅と同じ市内にある介護施設に入所しました。

 

「実家が空き家になってもう数年たちます。母が実家に戻ることはないでしょう。いずれ相続が発生すると思いますが、いまのうちにやっておくべき対策はありますでしょうか?」

 

佐藤さんは2人姉妹の長女で、同じく60代の妹がいます。2人とも家庭を築いており、佐藤さんは同じ市内に、妹は静岡県在住です。母親の相続人は佐藤さん姉妹で、基礎控除は4,200万円。父親が亡くなった20年前はすべてを母親が相続し、佐藤さん姉妹はなにも相続していません。父親の財産は自宅と預金で、当時の基礎控除額が大きかったことから、相続税の申告も不要でした。

 

現在の母親の財産は、自宅の土地建物と預貯金、生命保険の合計で、およそ1億円です。父親の相続時よりも金額が大きくなっているとのことですが、それは、資産家の末娘だったという母親が親族から相続した金融資産によるものです。

 

佐藤さん姉妹は2人とも持ち家があり、同居もしていないため、母親の相続では小規模宅地等の特例が使えず、かなりの相続税がかかってきそうです。かなりの金融資産が遺されていることから、納税資金には困りませんが、少しでも圧縮できたらと考えています。

「売却して、収益不動産にしよう」「それ、イイね!」→結果…

筆者と提携先の税理士からは、まず自宅の売却と資産の組み換えを提案しました。所有者が自宅を売却すると、所有期間に関係なく、売却時の利益の3,000万円まで控除できる「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」という特例があります。こちらを活用したうえで、収益不動産に組み替えるなどしたら、空き家となっている自宅が姿を変えて有効活用できるようになります。

 

説明を聞いた佐藤さんは「すごくいい方法だと思うので、母と妹に聞いてみます」といって、まずは最初の面談を終了しました。

 

ところが2週間後の2回目の打ち合わせで、佐藤さんはしょんぼりと落ち込んでいました。

 

「ダメでした…」

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