60代の姉妹は、90代の母が施設入所後、空き家となった実家不動産をどうするべきか、思いあぐねていました。2人がよかれと思い提案した相続対策を、施設の母親へ伝えたところ号泣されてしまい…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、事例をもとに解説します。
「自宅は絶対手放したくない!」母、周囲が引くほど号泣し…
筆者と税理士が詳しく事情を聞いたところ、最初に相談した妹とは意見が一致して盛り上がり、時間をおかず施設に行き、母親に提案したとのことでした。
「妹は、すぐ話に乗ってくれました。〈あの雑草だらけの古い空き家を売ったお金でマンションを買って、家賃が入るようになるならサイコーじゃない!〉って…。妹に静岡から出て来てもらって、2人でそのことを母へ提案しに行ったら、職員の人が引くほどの大声で、ワンワン泣かれてしまいました…」
母親は「自宅は絶対手放したくない」「あの家を人手に渡すのはイヤ」と強く訴えたといいます。
「本人が首を縦に振らなければ、空き家も売却できないし、対策もしようがないですよね…」
佐藤さんの実家は横浜市内にあります。普通の戸建て住宅として賃貸するには土地が70坪と広く、最寄り駅まで徒歩20分かかります。広い家を好む、若くて元気な子育て世代でも、学区の小中学校まで徒歩30分と聞けば、敬遠される可能性が高そうです。
「一体どうしたらいいでしょう。あの空き家、相続が発生するまで放置するしかないのでしょうか?」
貸家にするのも選択肢ですが、不便な立地がネックであり、借り手が見つかるかどうかわかりません。それ以前に、室内の荷物の整理やリフォームが必要で、数百万円単位の費用が発生します。
頭を悩ませていると、税理士が「グループホームはどうでしょう?」と切り出しました。
これからの高齢化社会を考えると、グループホーム型の老人ホームには需要があり、最近では、住宅街にも施設が増えています。グループホームを運営したいと考えている企業があれば、そちらとのマッチングを検討してみるのも選択肢だとの提案でした。
佐藤さんは、空き家にせずに自宅を活用できる可能性があるのなら、ぜひ前向きに検討してみたいということで、現状の自宅の活用方法と、その後の相続について、改めて母親を交えて家族で相談することにして、打ち合わせは終了しました。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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