(※写真はイメージです/PIXTA)

60代の姉妹は、90代の母が施設入所後、空き家となった実家不動産をどうするべきか、思いあぐねていました。2人がよかれと思い提案した相続対策を、施設の母親へ伝えたところ号泣されてしまい…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、事例をもとに解説します。

実家は長女が相続、活用の道を探る

その後、佐藤さんは、再び妹と2人、母親が暮らす施設に出向き、話し合いを行いました。

 

●自宅は手放すことなく、残す

●空き家となっている自宅は、グループホーム型の老人ホームとして活用の道を探る

●将来的には、不動産を長女である佐藤さんが相続し、妹は現預金を多く相続することでバランスをとる

 

家を残したいという母親の意向を汲み取り、佐藤さんが自宅を相続しますが、佐藤さんには、すでに夫と共有名義の自宅があるので、郊外の実家には住まないのは明らかです。

 

そのため、場所的にニーズがありそうな高齢者のグループホームとして活用する方向で、実現に向けて動くことになりました。

 

「妹とも話し合いましたが、母の希望にかなうかたちで、活用の道を探れたらと思います」

 

まずは業者を探すところから、相続対策をスタートすることになりました。

生前にできる対策、3つ

親の資産として、次世代が利用しない自宅不動産がある方、多額の現金がある方が、親が存命のうちに取れる相続対策としては、下記の3つがあります。

 

①自宅の売却

②自宅の活用(賃貸に出す)

③金融資産の対策(生命保険加入・現金贈与・不動産購入など)

 

①自宅の売却

 

自宅に住んでいた本人が売却すると、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」という、利益の3,000万円まで控除できる特例があり、かなりお得だといえます。自宅を売却したお金で収益不動産を購入すれば、資産の評価を圧縮できるうえ、建物は固定資産税評価から貸家評価になります。一般的に、区分マンションのような賃貸物件は、時価の3割程度の評価となります。

 

資産を圧縮することで相続税が下がり、同時に家賃収入が得られるようになるのはメリットです。しかし、当然ですが長年住んできた自宅はなくなってしまいますので、そこはデメリットだといえます。

 

②自宅の活用

 

自宅を売りたくない場合は、自宅の活用を検討します。空家では評価や特例等のメリットがありませんが、リフォームして賃貸すれば、土地は貸家建付地となり時価の6割程度に、建物は固定資産税評価の7割の貸家評価になります。さらには貸付用の小規模宅地等の特例が使えるので、土地評価が200m2まで50%減にできます。家賃も入ります。

 

ただし、建物内の荷物の整理とリフォームが必須で、数百万円のリフォーム代がかかります。仮に月額20万円の家賃が入るとしても1~3年程度の回収期間が必要です。

 

③金融資産の対策

 

預金や有価証券は「金額=財産の価値」であるため、保有しているだけでは節税対策ができません。そこで、生命保険加入・現金贈与・不動産購入などが選択肢となります。

 

 

 

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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