子どものない高齢の伯母の相続問題
今回の相談者は、40代の山田さんです。母親の姉にあたる伯母の相続について悩んでいるとのことで、筆者の事務所を訪れました。
「高齢の子どものない伯母にかわいがってもらっているのですが、相続の件で、伯母からの提案に迷っています」
山田さんの伯母は、10年前に夫に先立たれてからずっと、ひとり暮らしをしていました。しかし90歳を過ぎ、自宅での生活が大変になったため、つい最近、老人ホームに入所しました。伯母には子どもがなく、亡くなった際の相続人は伯母のきょうだいです。
伯母は6人きょうだいの長子の長女で、長男、二男、二女、三男、三女の5人が続きますが、健在なのは二男だけで、ほかのきょうだいは亡くなっています。山田さんの亡き母親は末っ子の三女です。
懇意だった末っ子の妹が急死してしまい…
山田さんの母親は伯母とひと回り以上の年齢差がありますが、伯母は山田さんの母親をとてもかわいがっており、交流も頻繁でした。そのため、山田さんも伯母と非常に親しくしています。
「伯母はとてもいい人なのですが、少し変わり者というか、気難しいところがありまして…。ほかの伯父伯母や、いとこたちとはいい関係ではありませんでした。そのため一層、高齢になってからは私の母を頼って、預金の管理まで任せていたのです。しかし、いちばん年下だった母が心筋梗塞で急死してしまいまして…」
山田さんの伯母は横浜の資産家に嫁いでおり、夫を亡くしたときには、公正証書遺言で全財産を相続しています。
伯母の財産は、自宅のほか、賃貸している区分マンションが4部屋、その他金融資産等で総額は2億円を軽く超えています。
伯母の相続人ですが、きょうだいとして存命なのは二男だけであり、亡くなったほかのきょうだいは、それぞれの子どもたちが代襲相続人です。法定相続人は長男の子3人、二男、二女の子2人、三男の子3人、三女の子1人(山田さん)で、合計10人です。
「養子縁組して私の子になって、財産を相続しなさい」
伯母が夫を見送ってひとり暮らしになってからは、山田さんの母親がずっとサポートしてきました。
「ほかの伯父伯母も、いとこたちも、叔母にまったく寄り付きませんでした。それなので、生活のサポートや介護は、伯母がホームに入るまでは、ずっと母と私が通ってやっていたのです」
そのようななか、伯母から山田さんに提案がありました。
「伯母から〈養子縁組して私の子になって、私の財産を相続しなさい〉といわれたのです」
山田さんはすでに両親がなく、独身であり、結婚の予定もありません。正社員で仕事をしていますが、特別収入が高いわけではないので、伯母の申し出はありがたいと考えています。伯母に急かされ、養子縁組の申請書の記入もすでに終わり、いつでも出せる状態だといいます。
養子縁組すれば、戸籍上、山田さんは伯母の子どもとなりますので、二男にあたる伯父や、代襲相続人になるいことたちに相続権が発生することはありません。
「この養子縁組の申請、提出しても大丈夫でしょうか? 何か問題がありますか?」