クリニックを経営していた高齢ドクターが引退。2人の息子たちは相続対策を心配しますが、相談した父親本人から、衝撃の発言が…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、について解説します。
クリニックをたたんだ80代父の相続対策
今回の相談者は、50代の鈴木さんです。去年まで現役医師としてクリニックを経営していた80代の父親の将来の相続について、対策の相談に乗ってほしいと、筆者の事務所を訪れました。
鈴木さんの両親は、母親が事務や経理を、父親が診察を担当するという役割分担で、長年クリニックを経営してきました。しかし、数年前に母親が死去。残された父親は、しばらくのあいだ、ひとりでクリニックを運営していましたが、高齢となったことから、去年の秋にクリニックをたたんで、いまは自宅でひとり暮らしをしているとのことです。
子どもは長男の鈴木さんと二男の弟の2人で、いずれも病院の勤務医をしています。
「私と弟は、父親と診療科目が違うので、クリニックの承継は考えませんでした。小規模のクリニックでしたので、きょうだい2人、相続対策は簡単だと高をくくっていたら、とんでもないことが判明しまして…」
「いま思い出したんだけどさ、お父さん、再婚だったんだよね」
母親が亡くなったときは、資産も少額で相続税の申告も不要だったため、父親が手続きをすませていました。しかし父親の財産は、クリニック併設の自宅以外に、患者さんの駐車場として使い、いまは貸し駐車場として収益を得ている自宅そばの土地、伊豆の別荘、預金など、合わせると基礎控除は軽くオーバーすると予想されます。
鈴木さんと弟は、クリニックを閉めてから自宅にひきこもり、ずっとスマホでゲームをしている父親に、預金や不動産などの書類を整理して、相続対策を進めてほしいと話を持ちかけました。
「好物の焼き鳥をもって、弟と一緒に実家を訪ねたんです。父に話しかけても、焼き鳥を頬張りながら、ずっとスマホでプチプチとゲームをしていて…。やっと顔を上げたと思ったら、とんでもないことを言い出したんですよ」
「〈そういえば、いま思い出したんだけどさ、お父さん、お母さんとは再婚だったんだよね〉って。私も弟も、思わず〈ハァ?〉と…」
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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