(※写真はイメージです/PIXTA)

父親の相続時には不要だった相続税の納付。父のときより預貯金が大きく減った母親の相続なら、相続税の納付はなおさら不要…。そう考えて気楽に構えていたある女性のもとに、税務署から「お尋ね」の封書が届き、パニックに。納付期限が迫るなか、対応に追われますが…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、事例をもとに解説します。

基礎控除内でも税務署への申告は可能

母親の財産は預金400万円、生命保険は非課税枠内の500万円です。基礎控除は4,200万円ですので、不動産評価が3,800万円を超える場合は相続税の申告が必要となります。

 

鈴木さんと弟との間では、遺産分割について、自宅は鈴木さんが相続し、預金と保険は2人で等分にするということで合意ができているといいます。

 

筆者の事務所の提携先の税理士に諸々の財産目録を作成してもらったところ、不動産評価は不整形などを考慮し、預金や金融資産をプラス、葬儀費用などをマイナスとして差し引くと、最終的に4,100万円の財産となりました。

 

これで基礎控除内であることが確認でき、相続税の申告も不要となりました。

 

しかし、鈴木さんは税務署から問い合わせが来たことを不安視しており、念のため相続税の申告書を作成して税務署に提出することを希望したため、それらも含めて税理士に引き受けてもらうことになりました。

 

この対応によって「ご案内」にあった質問に回答したこととなり、相続税の納税は不要であることの証明になるのです。

申告期限ぎりぎりに着地「今夜からぐっすり眠れます」

税務署から「相続税についてのご案内」が送られてきたのは、母親が亡くなってから8ヵ月過ぎ、つまり期限の2ヵ月前でした。そして、筆者のもとに相談に来られたのが期限の1ヵ月半前という、ギリギリのスケジュールです。

 

しかし、鈴木さんはそれまでに、戸籍関係の文書を取得し、銀行の残高証明書や不動産の固定資産税通知などをそろえていたので、作業はスムーズでした。

 

「一時は恐ろしくてたまりませんでしたが、これで安心しました。今夜からぐっすり眠れます」

 

鈴木さんはほっとした表情で、事務所をあとにされました。

 

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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