相続対策を覚悟した瞬間
先日、Sさん(70代・男性)が個別相談にお越しくださいました。
実はSさんとは、今回が初めてのご縁ではありません。5年前にも一度、相続対策のご提案をさせていただいていました。
しかしそのときは、「まだ元気だから」「もう少し様子を見てから」ということで、実行には至りませんでした。
そして今回 ── 70代半ばを迎えられたSさん夫婦は、こうおっしゃいました。
「いよいよ本格的に考えないといけないと思って……」
この“5年”は、決して小さな時間ではありません。相続対策においては、むしろ「決定的な差」になる時間です。
お金はある。でも「相続できない」状態
Sさんの資産は、決して少なくありません。むしろ、一般的には「十分に恵まれている」状況です。
・海外不動産(アメリカ・マレーシア)
・区分マンション5戸
・貸宅地
・広大な自宅
収入も年間1,000万円以上あり、生活に困ることはありません。しかし、私はその内容を見た瞬間、はっきりと申し上げました。
「このままでは『相続できない財産』になっています」
問題① 海外不動産という「時限爆弾」
Sさんは、過去に収益目的として海外不動産を取得されていました。当時は確かに有効な方法でした。
しかしSさんの年代が上がったいま、海外不動産は「税金は日本、手続きは海外」という二重構造で、相続財産としては節税にならず、手続きが大変なので、相続人には負担になります。
海外では日本よりも手間も費用もかかるのです。まずは、戸籍を収集して、その後、現地語への翻訳が必要なので通訳を探して依頼します。次に、公証役場で正式な書類を作成してもらいます。こうした手続きは現地弁護士へ依頼することになります。
これらをすべてクリアして、ようやく評価も出せて、名義変更することができます。
しかも、費用は数十万では済みません。場合によっては数百万円、期間も順調に進んで半年ほどですが、数年かかることもあります。
さらに、日本の相続税評価は、「時価」となるため、「時価」を証明する書類も弁護士に依頼する必要があります。結果、相続税は下がらず、為替リスクも抱えたまま。つまり「相続できても、節税にはならず、負担となる財産」。
これが海外不動産の現実です。
問題② 分散しすぎた不動産
区分マンション5戸、貸地、自宅……。資産がバラバラに存在しています。
一見すると「分散投資」でリスクヘッジしているように見えますが、相続の視点では逆です。管理が煩雑、意思決定が分散、相続人が困る。結果、相続人にとっては煩わしく、「分散」は、承継を難しくします。
問題③ 家族が引き継げない現実
Sさんには2人の息子さんがいらっしゃいます。長男はすでに結婚され、別居。ご自身の家庭と仕事を持ち、順調な生活を送られています。一方、次男は同居されていますが、30代で独身。仕事も転々として不安定だと。
この状況で、
・賃貸経営を誰が引き継ぐのか
・修繕や入居者対応を誰がやるのか
明確な答えはありません。さらに言えば、「継げるかどうか」ではなく、「そもそも継げる設計になっていない」のです。
問題④ 広い自宅が「リスク」に変わる時代
Sさんのご自宅は、木々に囲まれた広い邸宅です。かつては「成功の象徴」であり、理想の住まいでした。しかし今はどうでしょうか。
・死角が多い
・周囲から見えにくい
・高齢者世帯
連日のように報道される強盗事件。狙われるのは、こうした家です。
「次男がいるから大丈夫」とおっしゃいますが、その次男が、いざというときに家を守れる状態でしょうか。現実は、「安心の象徴だった家が、不安の原因になっている」のです。
