父親の相続時には不要だった相続税の納付。父のときより預貯金が大きく減った母親の相続なら、相続税の納付はなおさら不要…。そう考えて気楽に構えていたある女性のもとに、税務署から「お尋ね」の封書が届き、パニックに。納付期限が迫るなか、対応に追われますが…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、事例をもとに解説します。
老親を見送った50代独身女性〈税務署からのお尋ね〉に戦慄
今回の相談者は、50代会社員の鈴木さんです。8ヵ月前に亡くなった母親の相続の件で困ったことが起きていると、筆者の事務所に駆け込んでこられました。
「税務署から、こんな書類が送られてきて…」
鈴木さんが握りしめていたのは、税務署からの「相続税の申告等についてのご案内」の封筒、いわゆる〈税務署からのお尋ね〉でした。
鈴木さんは長女で、3歳年下の弟がいます。また、独身の鈴木さんは会社員として働きながら、ずっと両親と同居し、日常のこまごまとした面倒を見てきました。弟は結婚を機に別世帯となり、いまは妻と子ども2人、隣県に家を購入して生活をしています。
十数年前の父親の相続では、全財産が母親のものに
「父が亡くなったのは12年前ですが、そのとき母はまだ70代になったばかりでした。そのため、父の財産は母の老後を見越し、すべて母が相続したのです」
鈴木さんの父親が亡くなった当時は、相続税の基礎控除の改正前でした。当時は「5,000万円+相続人1人につき1,000万円」が基礎控除額で、8,000万円の財産までは相続税はかかりませんでした。
「父の財産は自宅と預貯金のみです。当時は、たしか自宅が3,500万円ぐらい、預金は2,000万円ぐらいでした。そのため、税務署には申告も、納税も不要だったのです」
鈴木さん家族は、母親に財産を移すため、遺産分割協議書を作成。無事に、不動産や預金の名義替えの手続きをすませたのでした。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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