父の死から10年以上経った相続
相続が発生した直後は、「今はまだ大丈夫」「家族仲も悪くないから急がなくてもいい」と考える方が少なくありません。しかし、時間が経過するほど相続手続きは複雑になり、家族の負担も大きくなります。
今回ご相談いただいたKさんも、その典型的なケースでした。
父親が亡くなったのは2014年。気が付けば10年以上が経過していました。しかし相続登記も遺産分割も行われないまま、不動産は父名義のまま残されていました。
さらに相続人のなかには「認知された子」が存在しており、家族だけで話を進めることもできません。
2024年から相続登記が義務化されたことをきっかけに、「このままではいけない」と感じたKさんは相談に来られました。
【相談者】Kさんの場合
Kさん(女性・50代)は、兄・姉・妹の3人きょうだいの末っ子です。父親の死後、長年手つかずとなっていた相続手続きを進めたいと考えていましたが、実際に動き出そうとすると予想以上に複雑な状況に直面しました。
特に大きな問題となったのが、父親に認知した子がいるという事実です。
「相続人は誰なのか」
「どこまで同意をもらう必要があるのか」
「自宅はどうなるのか」
こうした不安が重なり、なかなか一歩を踏み出せずにいました。また、自宅には高齢の母親と妹が居住しており、不動産をどのように分けるべきかも悩みの種でした。
兄弟関係を壊したくないという思いが強く、慎重になればなるほど時間だけが過ぎていったのです。
Kさんの家の資産構成
今回の相続財産は主に次の3つでした。
自宅の土地・建物
現在も母親と妹が居住している生活の拠点であり、単なる財産ではなく「住まい」としての意味を持っています。そのため売却や分割は簡単にはできません。
父名義の収益アパート
一定の家賃収入を生む資産ですが、相続登記が行われていないため売却も有効活用も難しい状態でした。放置期間が長くなるほど管理リスクも高まります。
預貯金などの金融資産
詳細な金額は不明でしたが、高齢の母親の生活資金として重要な役割を持つ資産でした。不動産と金融資産が混在する、典型的な相続案件といえます。
【課題】
① 相続登記義務化への対応
父親の相続発生から10年以上が経過していました。2024年から相続登記が義務化されたため、このまま放置すると過料の対象になる可能性があります。また売却や建替えなどの手続きも進められません。
② 相続人関係の複雑化
認知された子も法定相続人となります。そのため遺産分割協議には全相続人の参加と同意が必要であり、通常の相続よりも慎重な対応が求められました。
③ 不動産の分け方
自宅は母親と妹が住み続ける必要があります。一方でアパートは収益不動産であり、共有・売却・代償分割など複数の選択肢があります。どの方法が最も公平で将来のトラブルを防げるかを検討する必要がありました。
④ 税負担の把握
アパートを売却すれば譲渡所得税が発生します。税金を考慮せずに分割案を決めると、後から不公平感が生まれる恐れがあります。
⑤ 二次相続への備え
母親は99歳と高齢です。今回の相続だけを解決するのではなく、将来発生する母親の相続まで見据えた設計が必要でした。
