※画像はイメージです/PIXTA

遺産相続には「7つの時効」があります。これらの時効を知らないことで、本来もらえるはずの財産がもらえなかったり、本来払う必要のない債務を払うことになったりと、重大な不利益を被る可能性があります。それぞれの時効について解説していきます。

具体的な7つの「時効」とは

遺産分割に関する「時効」は、下記の7つの手続きに関するものです。これらを意識するだけでも、遺産相続の手続きを進める上で必要なスケジュールを把握することができます。遺産相続という重要な意思決定をする場合において、時間がなくて焦ってしまうということがないようにゆとりあるスケジュールで手続きを進めていきましょう。

 

1.遺産分割をする権利(遺産分割請求権)の行使

2.遺留分侵害額請求権の行使

3.相続回復請求権の行使

4.相続税の申告

5.相続放棄の手続き

6.不動産の名義変更の手続き

7.生前贈与の贈与税の申告

各「時効」についての解説

ここからは各手続きの「時効」について解説していきます。

しかし相続回復請求権(「相続財産を返せ」という権利)、相続税、借金、相続登記、生前贈与といった遺産相続に関わる時効については、あまり関係のない人もいるでしょう。自身の関係のある部分のみ確認してください。

 

1.遺産分割をする権利(遺産分割請求権)の「時効」について(民法第907条)

被相続人(亡くなった方)が、遺言書を書いていなかった場合には、相続人間で遺産をどのように分けるのかを話し合いで決めなければいけません。この話し合いを、「遺産分割協議」と言います。そして、1人の相続人が他の相続人に対して「遺産分割をしましょう」と言う権利のことを、「遺産分割請求権」と言います。

 

この「遺産分割請求権」には、時効はありません。つまり、生きている限り永遠に請求することができます。しかも、仮に遺産分割をしていない状態で亡くなってしまったとしても、この「遺産分割請求権」は相続され次の世代の者が権利行使することができますので文字通り、永遠に存続します。

 

2.遺留分侵害額請求権の「時効」について(民法第1048条)

遺留分侵害額請求権の時効は、1年です。相続の開始(被相続人の死亡)と遺留分の侵害を知った時から1年間です。なお、相続の開始を知っていない状態ですと、この時効は相続の開始から10年となります。

 

「遺留分侵害額請求権」とは、遺言書によって財産を多くもらう人に対して、財産をあまりもらえない人が追加で財産をもらえるように請求できる権利のことを言います。たとえば、相続人が長男及び長女の子供2人の状態で、被相続人である父は生前に長男を可愛がりすべての財産を長男に渡す旨の遺言書を書いていたとします。この遺言書自体の内容は無効ではありませんが、このようにあまりにも遺産の取得に偏りができてしまうと残された相続人の生活もありますので、法律で、「最低限の遺産をもらえる権利」が長女に保証されています。この「最低限の遺産をもらえる権利」のことを「遺留分」と言い、それを請求する権利のことを「遺留分侵害額請求権」と言います(民法第1046条)。

 

遺留分侵害額請求をする立場側から考えると、相続の開始と遺留分の侵害を知ってから1年以内に遺留分侵害額請求をしなければ、今後一生その請求はできなくなってしまいます。本来自分がもらえるはずの相続財産がもらえなくなってしまいますので、注意が必要です。

 

また、遺留分侵害額請求をされる側の立場ですと、遺留分を侵害して自分が多く財産を受け取っている場合、この時効である1年(10年)を経過しないと、他の相続人から遺留分侵害額の請求を受ける可能性があります。たとえば、遺産を相続して使ってしまっていれば、自分の財産を削って遺留分侵害額を他の相続人に渡す必要さえでてきますので、注意が必要です。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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