※画像はイメージです/PIXTA

きょうだいの遺産相続について、「親の面倒を看ていたら他の兄弟より多く遺産を相続する権利があるの?」「自分達夫婦には子供がいないので、将来自分の兄弟に財産がいってしまうのを避けたい」「兄弟で相続する場合の遺産の取り分(相続分)を知りたい」などの悩みをもつケースは多いもの。無用な争いを避けるためにも、きょうだいの遺産相続でよくあるトラブルと、事前にできる対応策について解説していきます。

きょうだい間での遺産トラブル事例とその防止策・解決策

きょうだいで遺産相続を行う際によくある代表的なトラブル事例を4つ紹介したいと思います。

 

【トラブル事例1】どちらかが「親と同居し親の面倒を看ていた」場合

きょうだいのいずれかが、親と同居し介護や経済的な援助をしている場合には、いざ親の相続が発生した場合にトラブルになりがちです。面倒を看ている方のきょうだいは、「自分は生前親の面倒を看ていたし経済的な援助もしてきたので、その分多めに遺産をもらいたい」と主張します。一方、面倒を看ていない方のきょうだいは、「それとこれとは話が別で、遺産は法定相続分に従って分けましょう」と主張します。このような場合は、遺産をめぐるトラブルに発展してしまうケースも少なくありません。

 

<防止策>

この場合の有効な解決策の一つは、親が生前に「遺言書」を書いておくことです。自分の面倒を看てくれた子供に多めに財産を渡すような遺言書を作成しておけば良いでしょう。そうすれば、いくら面倒を看ていない方のきょうだいが「もっと欲しい」と主張したところで、遺留分の範囲を侵害していない限りは争いようがないので、遺産トラブルを防止することができます。遺言書がない場合は、親の面倒を看ていたきょうだいが「寄与分」を主張することができます。相続人どうしで話し合うことは難しいため、家庭裁判所で調停を申し立てます。

 

寄与分とは、亡くなった人の療養看護あるいは事業の手伝いなどをした相続人について、相続分の上乗せが認められる制度です。ただし単に親と同居して扶養していたというように、通常期待される程度の貢献だけでは認められません。

 

【トラブル事例2】どちらかが「親から経済的援助を受けている」ケース

トラブル事例1とは逆のケースで、いずれかのきょうだいが親から経済的な援助を受けていた場合です。この場合も、経済的な援助を受けていない側のきょうだいが「自分はその分多めに財産が欲しい」と主張すれば、遺産トラブルに発展する可能性があります。

 

<防止策>

この場合の有効な解決策も、トラブル事例1と同様に「遺言書の作成」です。経済的な援助を与えていない子供に多めに財産を渡すように親が遺言書を残しておくことで、トラブルを防止することができるでしょう。

 

なお、経済的援助の内容によっては「特別受益」が認められ、経済的援助を受けていたきょうだいの相続分を少なくすることができます。但し、特別受益の計算方法等には明確な基準がないため、当事者間で話し合いがつかない場合には、弁護士に相談するか家庭裁判所で調停を申し立てることになります。

 

【トラブル事例3】分ける「遺産がほぼ自宅不動産」しかない場合

分ける遺産が自宅不動産しかない場合には、「遺産をどのように分けるか」についてトラブルになることが多いです。

 

たとえば、遺産が自宅不動産と現預金500万円だったとします。自宅不動産の価値が500万円で相続人であるきょうだいが2人であれば、一方は自宅(500万円)、もう一方は現預金(500万円)というようにきれいに分割することができます。自宅不動産の価値が3000万円だった場合はどうでしょうか。

 

自宅を相続した方の相続人が差額分を現預金で他の相続人に払うことができればよいですが、そうでない場合には困ったことになります。売却して現預金で分割することもできますが、たとえば一方の相続人が、親の思い出がつまっているから売却したくないといった場合は解決が困難になります。

 

<防止策>

この場合の防止策についても、事例1や2と同様に「遺言書の作成」が有効です。財産を残す側の親が、「自宅は売却して2人で仲良く現預金を分けてください」と指定しておけば揉めなくて済むでしょう。こういった遺言書がなければ、自宅を相続した相続人が差額分を現預金で払うといった方法や、広い自宅の場合には分筆して敷地を分けて相続するといった方法が考えられます。

 

【トラブル事例4】「子がいない夫婦」に相続が発生、遺産相続に「夫のきょうだい」が登場

子がいない夫婦で仮に夫が亡くなって、夫の両親も既に他界している場合は、夫の財産は配偶者である妻と、夫のきょうだいが相続することとなります。民法で定められた法定相続分は、妻が4分の3、夫のきょうだいが4分の1です。生前に一切付き合いがなかった夫のきょうだいが突然現れ、自分の相続分を主張してくるといったことも起こりえます。特に分けられる財産が自宅の不動産しかないような場合は、遺産を分け合うために自宅を売却することにもなりかねません。夫のきょうだいも法定相続人のうちの1人である以上、きょうだいの協力がなければ夫の預金から生活費を引き出すことすらできなくなってしまいます。

 

<防止策>

この場合の防止策についても、事例1や2、3と同様に「遺言書の作成」が有効です。自分の財産はすべて配偶者に渡すという内容を遺言書に書いておけばよいでしょう。きょうだいには遺留分がないので、このような遺言書を残しておくだけでトラブルは回避できます。適切な遺言書さえあれば、夫のきょうだいの協力や許可がなくとも夫の財産である預金からお金を引き出したりすることも問題なくできます。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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