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家族が亡くなったとき、残された人は悲しみに包まれますが、そのような心情に関係なく、遺産相続にかかわる手続きが待ち構えています。相続税は一定額以上の遺産がないとかかりませんが、遺産相続の手続きそのものは、遺産がいくらであっても(借金があってマイナスであっても)必要です。本記事では、遺産相続手続きで必要になる書類とその手続きを自身で行う場合の方法、それぞれの手続きを専門家に依頼したほうが良い場合とその費用の目安について解説していきます。

遺産相続手続きのアウトライン

必要書類を準備する前に、まずはあなたが何を相続したのかを確認する必要があり、それにより必要な書類が異なります。どういった財産を取得されたかによって、該当箇所を読み進めてください。

 

相続した財産の中に預貯金や株式がある場合

相続した財産の中に預貯金がある場合は、預け入れている金融機関に連絡して相続の手続きをします。名義を書き換えて預金口座をそのまま引き継ぐのではなく、預金口座の残金を引き出す手続きとなります。

 

株式は証券会社の口座に預けているのが一般的なので、取引している証券会社に連絡して相続の手続きをします。相続人が同じ証券会社に口座を持っていれば、被相続人が保有していた株式を相続人の口座に移管します。同じ証券会社に相続人の口座がなければ、その証券会社に新たに口座を開設する必要があります。異なる証券会社の口座に移管することはできません。

 

相続した財産の中に不動産がある場合

土地や建物といった不動産は、その概要と権利関係が登記簿に記録されています。相続した財産の中に不動産がある場合は、その不動産がある場所を管轄する法務局で相続登記をします。郵送やインターネットで申請することもできます。

 

相続した財産の合計が3,000万円を超えそうな場合

相続した財産の合計が3,000万円を超えそうな場合は、相続税が課税される可能性を考えなければなりません。相続税は、財産を相続した人にかけられる税金で、被相続人が亡くなった日の次の日から起算して10ヵ月以内に、被相続人の住所を管轄する税務署で申告と納税をしなければなりません。

 

借入金があって相続したくない場合

被相続人にローンなどの借入金があった場合は、それも相続しなければなりません。借入金を引き継いだばかりに、相続人のその後の生活が破たんするケースもあります。このようなことにならないように、相続人は相続を放棄することができます。

 

相続放棄をした人は、はじめから相続人ではなかったことになります。借入金を引き継がなくて済みますが、預貯金や不動産などのプラスの財産も引き継ぐことができません。相続放棄をするには、相続があることを知った日から3ヵ月以内に家庭裁判所に申し立てをする必要があります。

 

ただ、相続放棄をするとすべての財産を放棄することになり何も相続することができなくなります。そのため、借金の範囲内でプラスの財産を受け継ぐという「限定承認」という方法もあります。限定承認とは、相続人が相続した財産の額を限度に借入金の負担を受け継ぐものです。受け継いだプラスの財産の範囲で借入金を返済するので、相続人に新たな負担は生じません。借入金がどの程度あるかわからず、財産が残る可能性がある場合に、限定承認を選択することがあります。

 

しかし、裁判所の司法統計によると、相続放棄が年間約23~26万件あるのに対し、限定承認は年間700件程度にとどまります。あまり活用されているとはいえないのが現状ですが、その理由には、手続きの煩雑さがあります。限定承認は、相続人全員が共同で家庭裁判所に申し立てなければならないほか、公告や競売が必要になるなど、煩雑な手順を踏まなければなりません。これらの手続きを自力で進めることは難しく、専門家に依頼することになります。

次ページどの手続きでも共通で必要な書類は3つ

本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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