知的財産権や下請法について予め知っておくのは容易ではない
1.下請法との関係
本件のような業務委託契約については、しばしば下請代金支払遅延等防止法(いわゆる「下請法」)が適用される場合があります。
下請法が適用されるかどうかは、取引の内容と、取引事業者の資本金規模で判断されます。
下請法が適用される場合には、発注後に注文者が報酬を減額する、一定期間内に代金を支払わない、報酬を決める際に著しく低い額を定めるなどの場合に、下請法違反として委託者に勧告、公表、課徴金などの法的措置が課されることになります。
また、令和4年1月26日に下請法の運用基準が改正され、下請業者の保護がより厚くなっています。
詳細については、公正取引委員会のホームページをご確認頂ければと思いますが、取引先とのやりとりの中で不満を感じたときは、下請法の適用の可否を含めて調べてみるとよいと思います。
また、ご相談者が従業員を使用せず、お一人で事業を行っている場合、今年(2024年)秋頃以降、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(いわゆる「フリーランス新法」)が適用されることになります。同法の内容は下請法の保護の内容と同等のものですので、保護される受託者の範囲が広がるイメージとなります。
2.成果物の知的財産権の帰属
業務委託の場合には、成果物の知的財産権の帰属及び対価が問題になることが少なくありません。
今回の相談のようにWebページを作成する場合や、ソフトウェアなどのプログラム開発を行う場合などには、著作権の帰属や著作者人格権の行使の可否が問題となります。
まず、著作物が製作されると、その著作権は原始的に著作者である受託者に帰属します。その上で、委託者が著作権そのものを譲り受けるのか、著作権は受託者に残しつつ著作物を利用する権利だけを取得するのかなどを契約において決めておく必要があります。また、それにかかる対価が、業務委託料に含まれるのかどうかも、決めることになります。
さらに、著作物を公表できるかどうか、公表の際に著作者の氏名を表示させるかどうかといったことなどを決める権利を、著作者人格権というのですが、著作者人格権については譲渡ができないことになっています。そのため、著作者人格権については、著作者である受託者が、同権利を行使することができるかどうかが、契約において決められることになります。
受託者としては、知的財産権についての決まりや仕組みを理解しつつ、譲れない点を明確にしつつ、委託者と交渉していくことが必要となります。
しかし、知的財産権のことや下請法のこと、相談内容に関わる契約不適合のことなどを都度調べたり、予め知っておくというのは容易なことではないと思われますので、是非、弁護士にご相談ください。
齊藤 宏和
弁護士
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