(※写真はイメージです/PIXTA)

離婚時の財産分与は、夫婦間で原則2分の1ずつ分け合うことになります。そのため対象となる共有財産を明らかにしておくことは、後のトラブルを防ぐためにも大切です。では、共有財産に株式などの有価証券が含まれていた場合、どのように財産分与を進めれば良いのでしょうか。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、株式の財産分与について田渕大介弁護士に解説していただきました。

別居中に売却した株式の評価額はどうなる?

相談者のMさん(男性)は現在妻と別居中で、離婚に向けた話し合いを進めています。Mさんは別居中に、保有している上場株式を売却しました。

 

そこで財産分与の際に、別居中に売却した株式の評価額の基準は実際の売却額か、離婚時の時価になるのか疑問に思い、ココナラ法律相談「法律Q&A」に相談しました。

 

財産分与において、株式などの変動性のある資産はどのような扱いになるのでしょうか。

株式の評価額は、原則として「分与時」が基準

財産分与は、夫婦が協力して形成した財産を分ける制度です。この財産分与では、「どの財産が分与の対象か」という問題と、「その財産の評価はいくらか」という問題があります。

 

1つ目の問題について、夫婦が婚姻中に取得した株式は、共有財産として財産分与の対象になります。そして、別居を開始した時点で夫婦の協力関係は終了したと考えられますので、別居時に保有していた株式の数・種類が、分与の対象とされます。

 

2つ目の問題について、株式のように評価額が変動する財産の評価は、実際に分与を実行する時(調停成立時、訴訟であれば口頭弁論終結時)が基準になります。

 

以上が原則であり、これをMさんの例に当てはめると、別居後の売却は考慮に含まれず、あくまで別居時における株式の数・種類に、分与時の時価をかけて評価額を算出することになりそうです。

 

しかし、分与までに処分がされたときは、もはや株式が存在しないこととなりますので、評価額は、その処分価格となります(別居後に不動産を処分した場合も同様の扱いとなります)。

 

具体的には、売却額から税金等を控除した後の手取額が評価額とされます。

 

以上は、上場会社の株式であることを前提としたものです。上場株式は、取引価格が公表されていますので、容易に評価を行うことができます。

 

これに対して、非上場会社の株式の場合には、評価に大きな困難が伴います。具体的には、企業価値を算出し、それを株式総数で割って算出するべきこととなるのですが、不動産の鑑定等と同じく、当事者間で争いが生じることが少なくありません。

 

また、一方配偶者が経営する会社の自社株を保有しているケースでは、その保有する株式は、経営者としての能力・努力によって形成されたものであり、他方配偶者の貢献はないため、そもそも財産分与の対象にはならないなどとして、「どの財産が分与の対象か」という点から争いとなることもあり得ます。

株式は、分与の方法を検討することも重要

夫婦の共有財産に株式が含まれているからといって、必ずしも株式の評価が行われるとは限りません。

 

例えば、夫婦それぞれに株式を半数ずつ帰属させるという分与の方法をとれば(これは、「現物分割」と呼ばれる方法です。)、株式の評価を避け、容易に財産分与を実行することが可能となります。

 

ただし、非上場株式の場合には、家業の株式を離婚後の元夫婦が持ち合うということは現実的ではありませんので、この現物分割という方法が選択されることは、通常ありません。

 

このほか、一方配偶者が株式を全部取得し、他方配偶者に対して相応の金員等を支払う「代償分割」という方法や、株式を売却してその売却額を分与する「換価分割」という方法もあります。

 

株式の価額が下がっている場合には「代償分割」を選択し、逆に、上がっているときには「換価分割」を選択するなど、状況に応じた適正な方法を選択することが必要です。

 

方法論とは異なりますが、上記以外にも、株価の変動が大きい場合には、例えば、別居時の株価と分与時の株価の平均金額を採用して評価額とするなどして、個別的な調整を図ることもあり得ます。

 

以上のように、株式などの有価証券を含む場合の財産分与は、複雑な点が多いですし、裁判例が確立していない点も少なくありません。また、そもそも、財産分与の対象となる財産かどうかという点から争いになることもあり得ます。

 

離婚に伴う財産分与が適正な条件かどうかお悩みの方は、一度、お近くの弁護士に相談なさってみてください。

 

 

田渕 大介

弁護士

 

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