(※写真はイメージです/PIXTA)

定年まで頑張って働いた人ほど、リタイア後は悠々自適に暮らしたいと考えるもの。しかし、老後には“想定外”がつきものです。特に昨今増えている晩婚・晩産夫婦には注意が必要で……。本記事では、田中さん(仮名)の事例とともに、晩婚・晩産夫婦の老後の注意点についてFP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。

娘の進学のため、定年後の楽園は泡と消え…

地方銀行に40年勤め上げ、5年前、定年を迎えた田中秀夫さん(仮名/70歳)。長年の努力の末、2,000万円の退職金を手にし、妻の京子さん(仮名/69歳)の年金と合わせると月額25万円の公的年金を受け取っています。老後を悠々自適に暮らすには十分な額でしょう。

 

田中さんには遅く生まれた次女の美香さん(仮名/25歳)がいます。長女と長男の2人はすでに社会人として独立していましたが、次女の美香さんは遅くに生まれたため、まだ県外の大学に通っていました。田中さんの退職当時はまだ大学3年生。

 

「卒業まであと1年とちょっとで卒業だし……」

 

この予定は大きく変更になりました。退職後、娘から予想もしていなかった言葉を聞いたのです。

 

「大学院に行って研究職の道に進みたい」

 

理系の大学に通っていた美香さん。今後も研究を続けていきたいと考え、大学院への進学を希望します。4年で卒業して就職するものだと思っていた田中さん夫妻にとっては想定外のことでした。すでに退職を決定し、収入もなくなるタイミングで聞いた次女の大学院進学の申し出でしたが、不安に思ったものの「大事な娘のため」と引き続き学費を支払うことにしたのでした。

なかなか博士号は取得できず…

田中さん夫婦は、当初「子供の夢は当然手助けしてあげたい」と考えていました。しかし、当初2年の予定でしたが、2年を経過しても博士号を取ることができず、3年、そして4年と大学院に居続けたのでした。

 

大学院への進学を決めたときから田中さんはなんとか収入を増やそうと仕事を探しましたが、高齢であることと地方在住ということもあり、清掃作業や旅館のアルバイトしか職を見つけることができませんでした。アルバイトを掛け持ちするものの、収入は手取りで月に10万円いけばいい程度。

 

美香さんにはお金のことを話すことができず、無理をしながら学費に住居費にとお金を掛けていきます。そして、そのあいだには住宅のリフォームもあり1,000万円の支出が発生しました。退職してからのたった5年間で老後資金はもう残り300万円ほどになってしまったのです。

 

「いつまでこの状況が続くのか……」大きな不安を感じていますが、なかなか美香さんにはいえずにいました。

 

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