前回は、「景気」と「GDP」の関係について説明しました。今回は、バブル崩壊以後の「日本の経済成長」の実態を探っていきましょう。

日本は20年前から「まったく豊かになっていない」!?

ここまでの連載で、GDPの成長=国内の所得の増大=景気の上昇であることを理解していただけたと思います。

 

では、実際に日本の景気=GDPはどのような状況であるのかを見てみましょう。

 

1980年代に順調に増加していた日本のGDPは、バブル景気が崩壊した1990年頃から成長の速度が鈍り始めて、90年代後半からは明らかに低迷しています。2008年のリーマン・ショック以降は、90年代前半の水準にまで戻ってしまいました。簡単に言えば、私たちは20年前から名目上はまったく豊かになっていないのです。

 

仕方ないと思う人もいるでしょう。経済成長なんていつまでも続くものではないし、グローバル時代を迎えて発展途上国には成長の余地があるだろうが、人件費も高く人口も減少している先進国がいつまでも成長できるものではない、と考える人も少なくはありません。

実質GDPで見れば、わずかな成長が認められる

では、同じ時期の日本とアメリカの名目GDPの伸び率を比較した以下の図表を見てください。1980年を100としたときの指数で比較しているので、違いが明確に分かるでしょう。

 

[図表]日本、アメリカの名目GDPの推移(1980~2012年)

※出所 IMF
※出所 IMF

 

先進国であるアメリカはリーマン・ショックの年を除けば、今もなお恐ろしいほどの勢いで経済成長をしているのです。日本はその間20年以上にわたってほとんど伸びていないばかりか、下降の兆しすら見えます。

 

でも、とあなたは思うかもしれません。実感として、20年前と比べて貧しくなったとは感じない。むしろ、インターネットやケータイの発達によって、情報やコンテンツが簡単に手に入るようになったし、物価が下がっているから豊かになっているような気がする、と。

 

おっしゃる通りです。名目上の金額でいえば、日本のGDPは増えていないものの、物価の変動による影響を取り除いた実質GDPでいえば、日本はわずかながら成長しています。そのため、20年前と比べれば実質的には、確かに豊かにはなっているのです。

本連載は、2014年7月29日刊行の書籍『インフレ時代の投資入門』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

インフレ時代の投資入門

インフレ時代の投資入門

杉浦 和也・前野 達志

幻冬舎メディアコンサルティング

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