お金を大量に印刷し、市場に流せば問題解決!?
前回の続きです。モノに対する需要が少なく、お金に対する需要が多いのは、十分なお金が供給されていないからです。需要に対してお金の供給量が少ないために、みんながお金を使いたがらず、デフレが起きているのです。
では、どうすればいいのか。答えは簡単です。日本銀行がお金を大量に印刷して、どんどん市場に供給すればいいのです。そして、それを行おうとしているのが安倍政権であり、「安倍(アベ)政権の経済学(エコノミクス)」であるアベノミクスなのです。
しかし、はたしてお金(マネー)を供給(サプライ)するだけで、デフレが解消し、物価が上昇するのでしょうか。
元財務省官僚で、現在は嘉悦大学教授の高橋洋一氏は、各国の通貨供給量の伸び率と物価上昇率とには、明らかに相関関係があると説明しています。統計を見ると、各国の中で日本のマネーサプライの伸びだけが極端に低く、物価上昇率も低いのです。つまり、通貨供給量が不足していることが、日本のデフレの原因の一つだと考えられます。
通貨供給量と物価上昇率に相関関係があることは、世界の経済学者の間では半ば常識にもなっています。
実際に、アメリカは2008年のリーマン・ショックでデフレになりかけましたが、中央銀行であるFRB(Federal Reserve Board‥連邦準備制度理事会)が積極的な金融緩和を行って通貨を大量に供給したことで、インフレ目標である2%を一時的に回復し、現在もそれに近い数値を維持しています。
2012年の時点で、先進国の中でインフレ目標を持たない国は日本だけでしたが、安倍政権のおかげでようやくインフレ目標2%が設定され、まともな金融政策が行われるようになったことは日本にとって大変喜ばしいことです。
「人口増加率」と「インフレ率」に相関関係はない
ちなみに、日本では「デフレの原因は人口減少にある」との誤謬が広まっているようですが、人口増加率とインフレ率との間に、相関関係はありません。
その他、グローバル化やアジア諸国の台頭をデフレの原因とする論もありますが、いずれも部分的な説明にしかなりません。なにしろ日本は世界で唯一の長期デフレ国です。この現象を説明するためには日本特有の事情がなければなりませんが、グローバル化もアジア諸国の台頭も日本だけに影響を与えているわけではありません。
そして、日本特有の事情として第一に考えられるのは、通貨供給量(マネーサプライ)の少なさなのです。