「実質GDPの成長率」は他の先進国とほぼ変わらない
前回紹介した名目GDPの推移の図を見て、日本はそこまでダメな国になってしまったのかと悲観された人もいるかもしれませんが、私はそうは思いません。
確かに停滞してきましたが、それはこれまでの政府が、人々のためになるからと勘違いして、デフレを放置してきたからです。いわば人為的な政策ミスであり、これから取り返せる程度の停滞でしかありません。なぜならば、日本の実質的な国力はまだそれほど衰えていないからです。
その証拠に、実質GDPの成長率をOECD先進国と比較したものを見てみましょう。日本は確かに最下位ではありますが、その差はまだそれほどではないといっていいでしょう。
[図表]OECD先進国の実質GDPの推移
図表にあるように、実質GDPにおいて日本が辛うじて経済成長を続けているのだとしたら、なぜ日本の名目GDPは停滞しているのでしょうか。
その理由はデフレにあります。各国の名目GDPの成長率は、実質GDP成長率に消費者物価指数の上昇率を加えたもので、日本以外の主要国では消費者物価指数がプラスを維持しているからです。
考えてみれば、当然のことですが、物価が上がれば、名目GDPは上昇するものです。消費者の支払った価格がGDPに反映されるからです。
では、日本もデフレを解消して、緩やかなインフレになれば名目GDPも成長するのでしょうか。その通りだと私は考えています。実質GDPが成長している以上、インフレを起こすことで名目GDPも上昇に転じるのです。
デフレの理由は、若者がお金を持っていないから!?
だとするならば、なぜ日本だけがデフレに陥ったのでしょうか。その答えの一つは通貨の供給量にあります。
デフレとは、モノの価値が下がって、お金の価値が上がることです。経済学においては、何かの価値が下がるということは需要に比べて供給が多すぎるからであり、何かの価値が上がるということは需要に比べて供給が少ないからだと考えられています。
日本で、モノの価値が下がるのは、十分な供給がなされているのに、モノに対する需要が少なくなっているからです。そしてお金の価値が上がっているのは、お金に対する需要が多くなっているのに、お金の供給が増えていないからなのです。
モノの供給が十分なのに、需要が少ないというのは「モノが売れない」と騒がれている日本の現状にも合致しています。
メディアはよくモノが売れない理由を、「若者のクルマ離れ」とか「ビール離れ」とか「草食化で欲望の薄い若者たち」などと何でも現代人の特性にしたがりますが、それは正しくありません。
経済学的に言えば、モノが売れないのは、単に、若者がお金をあまり持っていないからです。お金がないから、需要が伸びないのです。
この話は次回に続きます。