前回に引き続き、「景気がいい状態」と判断する基準を説明します。今回は、資産防衛のために知っておきたい「景気」と「GDP」の関係を見ていきましょう。

言葉としては馴染みの深い「GDP」だが…

前回の続きです。本連載では、生活がよくなる=景気がよくなる、と仮定して話を進めていきたいと思います。

 

では「景気」とはいったい何でしょうか。私たちは日常的に「景気がよくない」とか「不景気だ」とか口にしますが、その本当の意味を分かっている人はどれくらいいるのでしょうか。

 

日本の景気(実体経済)は、政府が毎月発表する「景気動向指数」や「景気ウォッチャー指数」によって表されます。「景気動向指数」とは有効求人倍率や完全失業率、全産業の営業利益などの各種経済指標から生み出されるもので、「景気ウォッチャー指数」は、小売店やレジャー産業など景気に敏感な職種へのアンケートによってつくられるものです。

 

最も簡単で、皆さんに馴染みの深い指標としてはGDP(Gross Domestic Product、国内総生産)があります。GDPとは教科書的な説明だと「国内で一定期間内に生産された付加価値の総体」となりますが、ちょっと分かりにくいですね。

 

平たく言えばGDPとは「日本でどれだけの富がつくられたのか」を表すものです。もっと簡単に言えば「どれだけの利益が生み出されたのか」ということです。

 

例えば、農家がメロンをつくって500円で出荷したとき、ここでは500円分の富が生産されたことになります。そのメロンを農協が700円で青果店に卸したとき、ここでは700円(卸値)−500円(仕入れ値)=200円の富が生産されたことになります。

 

そのメロンを消費者が青果店から1000円で購入したとすると、1000円(販売価格)−700円(青果店の仕入れ値)=300円の富が生産されたことになります。

 

500円+200円+300円で、合計で1000円の富が発生していますが、これは最終消費者が青果店に支払った金額と一致しています。つまり、GDPとは消費者がどれだけお金を使ったかを反映するものといっていいでしょう。

 

みんながお金を使えば使うほどGDPの金額は増えて、逆に節約すればするほどGDPは減っていきます。

国内で作られたものを買うことが「景気回復」への近道

なぜ、これが景気に反映するかといえば、消費者が1000円を支払った場合、青果店に300円、農協に200円、農家に500円の所得が発生するからです。つまりGDPが増えれば増えるほど、国内の生産者の所得も増えて、みんなが豊かになるわけです。

 

ですから、外国で生産されたモノを外国の店から直接、あなたが個人輸入した場合、GDP(国内総生産)はほとんど増えません。あなたの家までの配送を担当する宅配業者の利益が富の生産としてカウントされるくらいです。

 

つまり、GDPを上げて日本を豊かにしたいと思えば、国内品を買ったほうがいいわけです。もっとも最近では国内メーカーの商品を買っても、中国などの海外で生産されていることが多くなりました。

 

逆に言えば、国内で生産したものを海外で売ることができれば、国内の消費者の懐に頼ることなくGDPを伸ばすことができます(とはいえ、貿易黒字が続くと為替レートも調整されますし、外交的にも問題が出てくるので必ずしもよいことばかりではありません)。

 

なお、消費者の使う金額の合計とGDPとはイコールではありません。GDPはあくまでも生産された付加価値の合計だからです。

本連載は、2014年7月29日刊行の書籍『インフレ時代の投資入門』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

インフレ時代の投資入門

インフレ時代の投資入門

杉浦 和也・前野 達志

幻冬舎メディアコンサルティング

仮に今、あなたに1000万円の預金があるとしましょう。安倍内閣が掲げるインフレ目標2%が今後毎年達成された場合、その預金の価値は毎年2%、つまり20万円ずつ目減りしていくことになります。預金の金利はもちろんつきますが、現…

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