(写真はイメージです/PIXTA)

23年第一四半期の不動産取引総額は前年同期比36.1%減の1兆600億円と急減速しました。本稿ではニッセイ基礎研究所の渡邊布味子氏が、国内不動産投資市場の現況と今後の見通しについて解説します。

3―世界の不動産投資市場の動向

世界の不動産投資市場は大きく減速している。2023年第1四半期の全世界の不動産売買額は2,108億ドル、前年同期比▲51.8%と、2022年第4四半期から2四半期連続の前年同期比大幅減となった。一方で、アジア太平洋は▲35.6%と比較的少ない減少幅となった。

 

特に不動産投資市場および賃貸市場が停滞している国・都市に拠点を持つ外国資本には、海外の不動産に投資しづらい環境であるようだ。

 

なお、同じ国・地域でも、事業者の判断や運営するファンドの運用方針によっても投資スタンスが異なり、外国資本とひとくくりにした一様の傾向を見つけるのは特に難しい局面と考える。

 

4―崩れにくい不動産投資市場と、海外および市場外のリスクの高まり

以前の不動産投資市場なら一定のサイクルが見られた。しかし、現在の国内不動産投資市場は、国内外のREIT・政府系投資機関・私募リートなど、長期保有目的で、一度不動産を取得すれば容易に転売しない投資家や事業者が増加しているため崩れにくい状況だ。

 

市場に供給される物件の数は以前より少なく、都心部の競争力のある物件であれば驚くような価格で落札されることも珍しくない。

 

一方で物件やエリアにより2極化しており、郊外部のオフィスなどの買い手がなかなか現れない物件もあるようだ。

 

海外不動産投資市場や、金利、経済情勢の動向など、外部の金融環境から国内不動産投資市場の停滞を招く要因の懸念も高まっており、しばらくは多角的に情勢を注視する必要があると考える。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年8月8日に公開したレポートを転載したものです。

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