(写真はイメージです/PIXTA)

23年第一四半期の不動産取引総額は前年同期比36.1%減の1兆600億円と急減速しました。本稿ではニッセイ基礎研究所の渡邊布味子氏が、国内不動産投資市場の現況と今後の見通しについて解説します。

1―国内全体の不動産取引の動向(2023年第1四半期)

MSCIリアル・キャピタル・アナリティクス(以下、売買データは同社の2023年5月25日の公表)によると、国内不動産市場の2023年第1四半期の不動産取引総額は約1兆600億円、前年同期比▲36.1%となった[図表1]。

 

この取引総額は、世界金融危機のあった2008年以降で見れば、2009年第1四半期の8,389億円に次いで少ない。高値水準かつ順調な取引量を維持してきた不動産市場だが、ここにきて急減速している。

 

 

過去5年程の都市別の取引額は、概算で東京が約5割、大阪が約1割、東京以外の関東が1~2割、その他が約2~3割を占めていた。

 

しかし、直近の動向を見ると、東京への投資割合は2022年第1四半期が66%、2023年第1四半期が67%と東京への投資割合が増加している。不動産の価格は市況後退局面では、競争力の高い物件・エリアほど価格が下落しにくい傾向があり、リスク回避的な動きが強まっていると見ることもできる。

 

2―外国資本の国内不動産購入の動向(2023年第1四半期)

また、外国資本による2023年第1四半期の不動産購入総額は約1,370億円で、前年同期比▲42.1%となった[図表2]。2023年5月8日時点の公表から約330億円減少しており、一旦2023年の取引と公表されたが、2022年内の取引であると判明した案件があったようだ。

 

 

売り主の内訳を見ると、外国資本の売却が48.1%と、2022年通年の25.9%より増加している。

 

諸外国では12月が決算期末である会社が多く、同月に財務改善目的の売却が生じやすい。「2022年の決算期内で現金または売り上げを確保するため、市場価格が下落していない日本国内の不動産を売却した外国資本(売り主)」と、「価格が安定した日本の不動産への投資姿勢を強めた外国資本(買い主)」がそれぞれ一定数いたものと推定される。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年8月8日に公開したレポートを転載したものです。

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