「今が最後のチャンス」老後のためにと決断した夢の新築・3LDK
「“なんとかなるだろう”という見通しが、結果的に甘かったのだと思います。当時はそれなりに慎重に考えたつもりだったんですが……」
地方都市の賃貸アパートで暮らす斉藤幸作さん(仮名・65歳)は、静かに当時を振り返ります。
遡ること15年前。50歳だった幸作さん(当時年収750万円)は、一人息子の中学校進学を機に、5歳年下の妻・和恵さんの希望もあり、駅前の新築マンションを買う決断をしました。
3,200万円の物件に対し、用意した頭金は500万円。残る2,700万円のローン(変動金利/35年返済)を組みました。毎月の返済額は約9万円。これに管理費や修繕積立金を加えると、毎月の住居費は約13万円でした。
当時の幸作さんの世帯の手取りは、妻のパート収入も合わせて月45万円ほど。中学1年生の一人息子を抱えていましたが、「60歳の定年時に退職金(見込み1,200万円)でローンの大半を繰り上げ返済し、それ以降の負担を月5万円以下に減らせば、再雇用の給料でも無理なく払い続けられる」という計画でした。
当時の状況からは、十分に現実的なライフプランに見えました。しかし、人生の後半戦には、予想もしない「想定外」が重なることになります。
想定外の連続…窮地に陥った家計
最初の誤算は、幸作さんが55歳で役職定年を迎えたときでした。会社の業績不振にともない、給与制度が一新。想定を大きく超える「年収200万円減」となり、年収550万円へと一気にダウンしてしまったのです。
さらに、60歳を迎え、あてにしていた退職金が、会社の制度改定によって一律で引き下げられ、実際には800万円しか支給されなかったのです。これではローンの大半を繰り上げ返済し、毎月の負担を減らすという計画が成り立ちません。
重い住宅ローンを抱えたまま、60歳からの再雇用生活に突入。幸作さんの年収は240万円(月20万円)にまで激減しました。和恵さんのパート代を合わせても、夫婦の手取りは「月30万円を超えるかどうか」という厳しい現実。
そんなタイミングで、最大の想定外が起こります。一人息子が、「どうしても東京の私立大学で学びたい分野がある」と、熱意をぶつけてきたのです。子どもの夢を応援したい。親としてお金がないとは言えない――。最終的に進学を認めました。
しかし、手取り30万円ほどの収入から、毎月の住宅関連費13万円を支払い、夫婦2人の生活費を捻出し、さらに東京への仕送りと学費をカバーするのは、物理的に不可能な状態でした。
家計を預かる和恵さんは、ただでさえ仕事のプレッシャーや減収で悩む夫に、この窮状を相談することができませんでした。「息子が卒業するまでの数年間、なんとか乗り切れば……」。その一心で、和恵さんはある行動に出てしまいます。

