高齢者は「ぽっちゃりさん」が長生きする
■結核が減ったのも薬ではなく栄養状態が改善したから
日本で結核が減ったのも、栄養状態の改善が大いに影響しています。
戦後、結核が減ったのはストレプトマイシンという抗生物質のおかげといわれています。
しかし、ストレプトマイシンは結核になってから使う薬であり、予防的に使うことはありません。くわえてストレプトマイシンが当たり前のように使われるようになったのは1950年頃で、その前から結核は減っていました。つまりストレプトマイシンのおかげ説では、結核が減った説明がつかないことになります。
結核が減ったのは脱脂粉乳のおかげです。
第二次世界大戦後、米軍から大量の脱脂粉乳が配られ、日本人はたんぱく質をとれるようになりました。食糧難による栄養不足が改善され、免疫力が向上したことで結核が減ったのです。
栄養状態の有り様は、このように病気の発症と密接にかかわっています。年をとったら余るくらい栄養をとることが健康を守ることにつながります。
■「もう少しやせましょう」で低栄養に。「ぽっちゃりさん」のほうが長生き
健診で指導されるのが「適正体重までもう少しやせましょう」という体重の引き算です。
適正体重(標準体重)の指標は、BMIという数値です。これは体重(㎏)を身長(m)×身長(m)で割ったもの。適正体重のBMI値は「22」です。
たとえば、身長170cmなら1.7×1.7×22=63.58なので、適正体重は63.58㎏ということになります。
日本医師会では「BMI値が25を越えると危険信号」としています。170cmの人だと72.25㎏を超えたあたりです。ところが現実には多くの統計で、BMIが25を越えた人がいちばん長生きという結果が出ています。
70歳を過ぎたらちょっと「ぽっちゃりさん」が健康的に長生きする秘訣です。
病気のために食事制限をせざる得ない場合を除いて、「太りぎみだから」と体重を落としてはいけません。消化吸収能力が低下している高齢者は、本来、余るくらい栄養をとってちょうどいいのです。ところが、日本の医師の大半は栄養学の知識がないために、「コレステロール値が高いので、脂身のある肉は避けましょう」などと高齢者に引き算医療を行ってしまいます。
若い頃は多少栄養が足りなくても、体力でなんとか乗り切れます。しかし、年をとってから栄養が不足すると、筋肉量が減り、活力が低下するフレイルになるなど、寝たきりのリスクが高くなります。高齢者はしっかり栄養を足さなくてはいけません。
BMIが35を超える高度肥満は改善すべきですが、日本人にはほとんどいません。ただし、おなかがポッコリ出ているビア樽型肥満(リンゴ型肥満)を放置するのは危険とされています。腹部にたまった内臓脂肪が悪玉物質を放出し、さまざまな害をもたらす(免疫細胞を作るという説もありますが)ので、肥満を改善する必要があります。
このタイプの肥満には運動が有効ですから、厳しい食事制限などは必要ありません。毎日30分でも歩く習慣をつけましょう。
和田 秀樹
ルネクリニック東京院 院長
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