趣味は散歩と図書館通い…定年後、静かに暮らす“おひとりさま”の日常

今回紹介する佐藤さん(仮名・68歳)は、いわゆる“おひとりさま”です。

佐藤さんは高校を卒業後、地元の自動車整備工場に就職。定年の60歳まで働きました。定年退職後、もともと人付き合いが得意ではなかった佐藤さんは仕事仲間とも疎遠になり、ひとりで静かな老後を過ごしていました。さして趣味もなく、日課は近所の散歩と図書館で昔の本や新聞を読むこと。

そんな日々を過ごす佐藤さんですが、金銭的に困っているわけではありません。定年退職した60歳時点で普通預金500万円と定期預金1,500万円をあわせて2,000万円の貯金がありました。加えて、親から相続した自宅の土地と建物があります。

65歳以降は月15万円の老齢厚生年金のみで暮らしており、給与収入があった現役時代に比べるとだいぶ少ない金額です。しかし、友人と食事をすることもほとんどなく、毎月の家計支出は14万円前後。ほとんど貯蓄を切り崩すことなく、穏やかで単調な日々を過ごしてきました。

※ 総務省「家計調査報告(家計収支編)2024年平均結果」によると、65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の家計収支は、実収入が13万4,116円に対し、実支出は16万1,933円と、2万7,817円の赤字になっている。

テレビをきっかけに興味が湧き…「SNS」を始めた佐藤さん

そんなある日のこと。たまたまつけたテレビをボーッと眺めていると、ワイドショーで「SNS」の特集が組まれていました。

「SNSか……悪くないな」

漠然と「SNSは若者のもの」と思っていた佐藤さん。しかし、この放送がきっかけでSNSに興味を持ち、一念発起して始めてみることに。

登録には苦労しましたが、図書館にある「使い方ガイド」「入門書」などを駆使してなんとかログインできるように。その後は散歩中に撮った写真や読んだ本の感想をアップすることが、だんだんと佐藤さんの新しい日課となっていきました。

佐藤さんが投稿すると、見知らぬ誰かが「いいね」を返してくれます。さらに「僕もこの本、気になっていたんです。読んでみよう」などと、いくつかの投稿に1回は、コメントがつくようになりました。

同じ感性を持った誰かがリアクションをくれる……。佐藤さんはすっかりSNSにハマってしまいました。