(※写真はイメージです/PIXTA)

骨肉の争いの代名詞と言っていい相続トラブル…。そんなつもりはなくても、勝手に話をまとめようものなら、後々、揉めることは必至でしょう。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、認知症だった被相続人からの遺産分割トラブルについて、大隅愛友弁護士に解説していただきました。

主張・立証責任は法律で決まっている

裁判では、法律(要件事実)に基づき、主張・立証の責任を負う当事者があらかじめ決まっています。これは争点の真偽が不明な場合、主張・立証責任を負う当事者が敗訴するというルールです。

 

本件では、要件事実に基づき、妹が父親の教育資金贈与に関する意思能力がなかったことの立証責任を負います。

証明の程度は高度の蓋然性まで必要

証明の程度は、高度の蓋然性(がいぜんせい)という考え方に基づくとされています。

 

具体的には、裁判官は常識に反した判決をしてはいけないため、一般の人を基準とし、原則として、ほとんど(80%~90%以上)の一般の人が間違いないと思えるレベルが必要と言われています。

 

これはかなり高度な証明の程度です。感覚として裁判でかなり押しているなと思われる状態でも負ける可能性があるということになります。

裁判所は客観的・専門的な証拠を重視

最後に、証拠の優劣のルールです。訴訟の場では様々な証拠が提出され、裁判官はそれらの証拠を踏まえて審理を進めて判決を行います。

 

証拠は全て同じ価値を持つのではなく、証拠の性質によって優劣があります。具体的には、客観的な証拠・専門的な証拠がより重要とされます。

 

本件では、認知症の診断(専門家である医師の診断)、要介護1(公的な機関である市役所の認定。比較的軽度の認定)、信託銀行が契約に関与(免許制である銀行が本人の意思、能力、希望を確認)、生命保険契約は生命保険会社も関与(銀行と同様)などが客観的な証拠として重要となります。

 

また、当事者が自分に不利な事情について自認しているときは、その事実も判決の基礎となります。

 

本件では、妹自身が3つの契約のうち教育資金贈与以外の2つの契約は積極的には争っていない(有効であることを認めている)ことは重要な事実となります。

本件では妹の主張は認められず・Tさん勝訴!

父親の教育資金贈与に関する意思能力がなかったことの主張立証責任は妹にあります。

 

そして、比較的軽度な要介護1の要介護度、信託銀行、生命保険会社が契約に関与している、妹自身も他の2つの契約については争っていない等の事情に鑑みれば、父親が教育資金贈与を行うことが出来なかったことの高度の蓋然性があるとまでは言えないという法的判断になります。

 

よって、裁判の基本ルールと本件の事情によれば、妹の主張は認められない(Tさんの勝訴)という結論になります。

 

なお、今回のTさんのご相談ではTさん勝訴と解説しましたが、他の訴訟では、証拠の有無や弁護士の専門性などによって、結果が大きく変わります。

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