(※写真はイメージです/PIXTA)

「返さなくてもいい」。そう言われて受け取っていた金銭は、法的に見た場合、返済義務があるのでしょうか。当事者間だけで解決できれば問題はなさそうですが、第三者が介入してくると、途端に問題が複雑になってきます。実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、遺産分割における生前贈与について鈴木崇裕弁護士に解説していただきました。

「返さなくていい」と言われていた生活費。生前贈与にあたるのか?

父親が他界してしまった相談者のはんさん(仮名)は、遺産分割について考えています。

 

相続権は母親とはんさんを含む子2人の3人にあります。当面は父親の遺産には手を付けず、母親が他界した後、兄弟間で場を設け、話しあうつもりです。

 

法定相続分の通りであれば、兄弟で二分の一ずつ均等になるケース。

 

しかしはんさんは一時期失業し、母親から生活費を援助してもらっている期間があります。母親は、その時の生活費を「返さなくていい」と話していたそうですが、生前贈与にあたる可能性は否定できません。

 

はんさんとしては、遺産分割での揉め事はできる限り回避したい考えです。

 

そこで、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の2点について相談しました。

 

(1)「返金は不要」という母親からの支援分は特別受益にあたるのか。

(2)遺産分割分の減額を回避するため、母親から持ち戻し免除の意思表示をしてもらう必要があるか。

遺言の作成が望ましいが、“持戻し免除”だけでも確実に

被相続人から相続人への生前贈与は、「特別受益」にあたり、原則として遺産に「持ち戻す」ことになります。「持ち戻す」とは、特別受益の金額を相続発生時点の遺産に加算したうえで、相続人それぞれの取得額を計算することをいいます。

 

具体的な例を挙げて計算してみると、被相続人のAさんに相続人として長男Bさんと次男Cさんがいて、相続発生時点の遺産が8,000万円あり、長男Bさんだけ生前贈与で2,000万円を受け取っていた場合には、特別受益の2,000万円を遺産に加算して、8,000万円+2,000万円=1億円が遺産の総額となり、1億円÷2=5,000万円がBさんとCさんの本来の取得額ということになります。

 

Bさんはすでに2,000万円を受け取っているので相続で取得するのは残りの3,000万円、Bさんが取得するのは5,000万円ということになります。持戻しにより、生前贈与を受けた分だけ相続の際の取得額が減ることで、相続人間の公平が保たれます。

 

ところが、この持戻しを、相続人の意思表示によって免除することができます。これを「持戻し免除の意思表示」と呼びます。

 

仮に上の例で持戻し免除の意思表示がされると、生前贈与の2,000万円は考慮されず、相続発生時点の遺産8,000万円をBさんとCさんで2等分することになるので、それぞれ4,000万円ずつ取得することになります。

 

ご相談者様は、お母様から支援してもらった生活費について「返さなくていい」と言っていただいているようですので、この生活費は生前贈与として特別受益に当たる可能性が高いです。

 

持戻し免除とは?

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

この場合、持戻し免除の意思表示がない限り、相続発生時点の遺産に加算して計算することになりますので、ご相談者様の取得する金額は減ることが予想されます。

 

ご相談者様の立場からは、持戻し免除を受けたいところですね。

 

お母様の「返さなくていい」という発言自体が持戻し免除の意思表示にあたると解釈できる可能性もありますが、否定される可能性もあります。

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