(※写真はイメージです/PIXTA)

骨肉の争いの代名詞と言っていい相続トラブル…。そんなつもりはなくても、勝手に話をまとめようものなら、後々、揉めることは必至でしょう。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、認知症だった被相続人からの遺産分割トラブルについて、大隅愛友弁護士に解説していただきました。

ココナラに寄せられた3つの相談に対する回答

今回の相談を担当する大隅愛友弁護士は、1000件以上の相続の相談実績があり、相続の専門誌に頼れる専門家として選出され、多数の相続の記事の執筆・監修を行うなど相続問題に専門的に取り組んでいる弁護士です。

 

今回は大隅愛友先生にTさんの相談への回答と、訴訟の基本ルール、亡くなられた方の意思能力に関する法的な判断、生前にできる相続問題の予防法について徹底解説していただきます。

 

相続問題はどなたにとっても他人事ではありません。ぜひこの記事を参考にしていただければ幸いです。

 

①訴訟で“自分に不利な部分を隠して”「有利な部分のみ」を主張できるか

自分に不利な部分を隠して(または無視して)有利になる部分のみを訴訟の場で主張すること自体は、法律や裁判のルール上、認められています。

 

また、妹の主張は禁反言(きんはんげん)の法理(ほうり)や訴訟上の自白にも当たりません。

 

よって、妹が暦年贈与金、生命保険金を受け取りながら、教育資金贈与のみ無効であると主張を行うこと自体は可能です。

 

②訴訟の争点は「契約時の父親の意思能力の有無」となるか

争点整理・訴訟法上の自白という訴訟の基本ルールと、訴訟に先だつ調停での妹の弁護士の主張によれば、訴訟の争点は教育資金贈与の契約時における父親の意思能力の有無になると予想されます。

 

もっとも、訴訟における主張・立証責任、証明の程度、有力な客観的証拠や妹自身の事情によれば、妹の主張が訴訟で認められないという結論になります(Tさんの勝訴)。

 

③契約締結後の「認知機能の低下」の影響

一旦、契約が有効に成立した場合、その後、契約当事者の認知機能が大きく低下しても、その契約が無効になったり、効力が及ばなくなるということは基本的にはありません。

 

今回は、教育資金贈与の契約時に父親が意思能力を有していなかったと妹が証明できなければ、契約は有効のままです。

 

その後の父親の認知能力の低下は契約の有効性に影響を与えません。

専門弁護士の見解!詳解|妹の主張内容に、高度の蓋然性があるとは言い切れない!

以下は、Tさんの相談の詳しい解説となります。

 

訴訟の基本ルール、意思能力の有無の法的な判断、相続問題が発生しないようにするための予防法などについても、相続に強い弁護士が徹底解説します。

訴訟には法令や裁判手続きのルールがある

Tさんの質問は、妹が問題としている教育資金贈与は、暦年贈与や生命保険と同時になされているにもかかわらず、妹が「自分たちも受け取る暦年贈与等は問題とせず」に、「受け取れない教育資金贈与だけを問題にする」ことが出来るのかという内容です。

 

自分に不利な部分は隠して(または無視して)有利になる部分のみ主張するという態度は、不公平であり、認められないのではないかということだと思います。

 

また、裁判を起こされることは大変な負担となるため、そもそも妹が裁判を起こすこと自体が認められるのかというお考えもあるでしょう。Tさんのお考えは、一般的な感覚としてはよく理解できます。

 

しかし、訴訟の場面では、法令や裁判手続きのルールがあるため、これらのルールに照らして問題を考える必要があります。

 

そこで、以下、①そもそも妹は訴訟を起こせるのか、②(起こせるとしても)訴訟の中でそのような主張をすることは認められるのかについて、それぞれ解説します。

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