(※写真はイメージです/PIXTA)

骨肉の争いの代名詞と言っていい相続トラブル…。そんなつもりはなくても、勝手に話をまとめようものなら、後々、揉めることは必至でしょう。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、認知症だった被相続人からの遺産分割トラブルについて、大隅愛友弁護士に解説していただきました。

裁判を受ける権利

裁判を受ける(起こす)権利は憲法上認められるものであり(憲法32条)、訴訟を起こすこと自体は今回の事情があっても制約されません。

 

憲法32条

 

「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない」

 

法令・裁判上のルール

裁判を起こせる場合でも、その中でどのような主張を行うことができるかは、法令や裁判のルールに従う必要があります。

 

今回の事情で問題となり得る法令・裁判のルールには以下のものがあります。

禁反言の法理(信義則)

禁反言(きんはんげん)の法理とは、自分がとった言動と矛盾した事実を主張することは許されないという法理です。

 

日本の法律には直接的な明文の規定はありませんが、民法の基本原則の一つである信義則(民法1条2項)が同趣旨のものとされています。

 

民法1条2項

 

「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。」

 

妹は暦年贈与、生命保険金を受け取ってはいるものの、暦年贈与、教育資金贈与、生命保険の契約に直接関与した訳ではなく、また、契約がそれぞれ別々のものであることから、「妹が教育資金贈与のみ無効と主張することは、自分がとった言動と矛盾する主張」とは言えません。

訴訟法上の自白

訴訟法上の自白とは、民事訴訟において、自分に不利な事実を告白した場合に、その告白とおりに事実が認定されることを言います。

 

民事訴訟法179条

 

「裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しない。」

 

今回の妹の行為は、民事訴訟の場で教育資金贈与を有効と認めているものではないので、訴訟法上の自白には該当しません。

 

結論

以上から、国民の裁判を受ける権利、禁反言の法理、訴訟法上の自白という法令・裁判のルールに照らしても、妹が訴訟を起こしたり、訴訟の中で教育資金贈与のみ無効であると主張すること自体は法的には問題がなく、認められることになります。

訴訟の争点の決まり方と、妹の主張は認められるのか

訴訟は全ての事実を証拠に基づいて審理を行うのではなく、まずは争いのある部分を明確にして(争点整理)、争いのある部分に絞って双方の主張・証拠の提出を行わせるという流れで行われます。

 

今回の争点は「父親の教育資金贈与時の意思能力」

亡くなられた方の財産管理能力は、法的には契約に関する「意思能力」と呼ばれる能力です。意思能力は、引出預貯金の使途や贈与の有効性の判断で問題となります。

 

本件では3つの契約(①暦年贈与、②教育資金贈与、③生命保険)があることから、論理的には3つの契約を全て争うことも考えられます。

 

しかし、教育資金贈与の金額が2,000万円と最も大きいこと、調停で妹の弁護士が「教育資金の贈与」に絞って主張していることから、教育資金贈与のみを争うと予想されます。

 

よって、本件の争点は父親の教育資金贈与の意思能力の有無となります。

 

本件の法的判断

次に、裁判における法的判断に関する基本ルールの解説です。

 

①主張・立証責任、②証明の程度、③客観的・専門的な証拠が重要とされることが裁判の基本ルールです。

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