(※写真はイメージです/PIXTA)

「人生100年時代」を体と心の健康を保ち、上機嫌で生きていくためには70代、80代の高齢期にあっても、「体と心を動かし続けること」だといいます。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『70歳からの老けない生き方』(リベラル社)で解説します。

助走期間を正しく過ごす3つのポイント

しかし、完全な多業種、あるいは同業種であってもこれまで縁のなかった他の企業ということであれば、そう簡単ではありません。新しい環境に適応するには努力と覚悟が必要です。

 

「昔取った杵柄」という言葉があります。餅つきの技になぞられて、若いときに身につけた技術は年を重ねても通用するという意味です。

 

もちろん、このことわざ通り、経験の技が生きるシチュエーションもあるに違いありません。けれども、刻々と新しいテクノロジーが誕生し、新しい文化、新しい知識や情報が生まれる現代においては、しばしば自分の杵柄を駆使するスキルがまったく役に立たないという事態が生じます。たとえば、美味しい餅でも機械で簡単に作られる、あるいは人が餅を食べなくなる事態が生じるかもしれません。

 

つまり「餅つき」以外のスキルを身につけなければならないということです。そのためには、フレッシュマンのマインドを持って、新しい情報の入力、新しいスキルの習得を心がけなければなりません。

 

■正しい助走のための3つのポイント

 

私自身、老年精神医学に長く携わってきており、特に認知症については専門といってもいいのですが、認知症の遠因となる脳の萎縮は、実際のところ、30代には始まっています。

 

もちろん、仕事や生活に支障をきたすようなことは一般的にはありませんが、日ごろから脳を動かしたり、脳を悩ませたりしなければ「脳力」は少しずつパワーダウンしていくと考えていいでしょう。

 

そう考えると、もし70代以降も仕事あるいは私生活において、精力的に活動したいと願うなら、日ごろから準備が不可欠です。

 

定年時の65歳をセカンドステージの「スタートライン=踏切板」とするなら、それ以前の世代は「助走期間」と位置づけられます。

 

では、この助走期間をどう過ごしたらいいのでしょうか。

 

その過ごし方は、自分がどういう70代以降を願うのかによって、さまざまでしょう。大切なことが3つあります。

 

①向上心、好奇心を育てる
②新しい情報への感度を磨く
③自分をいつでも「素人」「初心者」と思えること

 

「私は70歳だからもう助走期間はとれない」と心配される方がいらっしゃるかもしれませんが、やりたいことの内容やいままでの経験によって、必要になる助走期間はさまざまです。70歳から少しの助走で十分大きく跳べる場合もあります。

 

私自身、子どものころからいささか「多動」の傾向があり、好奇心が旺盛でジャンルを問わずさまざまなことに首を突っ込んできました。大学時代は医学部に籍を置きながら、『週刊プレイボーイ』や『CanCam』の記者としてアルバイトをし、さまざまな人の取材をしましたが、そのときの経験は医者としての現在の仕事、物書きとして仕事、映画監督としての仕事に大いに役立っています。

 

もし仮に「俺は東大の医学部だ」などとふんぞり返り、いま挙げた3つの要素の欠けた人間であったら、自分が生きるフィールドはごくかぎられていたはずです。

 

私が現在、曲がりなりにもマルチな活動を続けられているのは、こうした学生時代の経験があったからだと感じています。ある意味でいまの私にとっては、助走期間だったのかもしれません。

 

和田 秀樹
ルネクリニック東京院 院長

 

 

※本連載は和田秀樹氏の著書『「65歳の壁」を乗り越える最高の時間の使い方』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

70歳からの老けない生き方

70歳からの老けない生き方

和田 秀樹

リベラル社

定年前後の世代は、暮らし方によって老化の進み具合が大きく異なります。 加齢による心と体の老化への正しい知識をもち、ある程度受け入れながら適切な予防と対策をすることで、80代、90代になっても若々しく充実した生活が送…

「65歳の壁」を乗り越える最高の時間の使い方

「65歳の壁」を乗り越える最高の時間の使い方

和田 秀樹

日本能率協会マネジメントセンター

今日、65歳は人生の大きな岐路に立つ年だと言って良いでしょう。 「働いたほうがいいのだろうか」 「暇になりそうだが、何をしたらいいのだろう」 「健康状態も不安だ」 こうした、さまざまな課題と向き合わなければならな…

シャキッと75歳 ヨボヨボ75歳 80歳の壁を超える「足し算」健康術

シャキッと75歳 ヨボヨボ75歳 80歳の壁を超える「足し算」健康術

和田 秀樹

マキノ出版

老化による脳や体の衰えは避けられないもの。しかし「もう年だから」とあきらめることはありません!現代の710代は、老いと闘える最後の世代! 70代になったら薬で数値を下げたり、塩分や脂質の低い食事をションボリ食べる「…

80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい

80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい

和田 秀樹

廣済堂出版

70代は人生の下り坂に差し掛かった時期。一気に滑り台のようにおりていくか、鼻歌でも歌いながら気長におりていくか……。80代、90代を迎える大事な時間である70代をいかに過ごすべきか。30年以上にわたり高齢者医療に携わって…

アドラー流「自分から勉強する子」の親の言葉

アドラー流「自分から勉強する子」の親の言葉

和田 秀樹

大和書房

親の言葉かけが、子どもを東大へ行かせます。 罰しても子どもは勉強しません。なぜなら自分に価値があると思うときに子どもは勇気を持てるからです。アドラーは親子関係を対等なものと考え、子どもが人生の課題に取り組み、乗…

東大医学部

東大医学部

和田 秀樹 鳥集 徹

ブックマン社

灘高→東大理Ⅲ→東大医学部卒。それは、日本の偏差値トップの子どもだけが許された、誰もがうらやむ超・エリートコースである。しかし、東大医学部卒の医師が、名医や素晴らしい研究者となり、成功した人生を歩むとは限らない…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録