(※写真はイメージです/PIXTA)

日本銀行によると、2022年に個人の金融資産が過去最高の2005兆円で、その6割を高齢者が持っているそうです。その背景には使い控えていることが考えられます。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『「65歳の壁」を乗り越える最高の時間の使い方』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

強い刺激でないと心が動かなくなる

日本銀行によれば、2022年に個人の金融資産が年度末として過去最高の2005兆円となりました。その6割を高齢者が持っていると言われています。その背景には「子どもに残してあげよう」「まだ生きるためにお金がかかるから」と使い控えていることが考えられます。

 

経済が回っていかない要因は、お金が滞っているためだと私は思います。

 

私は至るところで、相続税は100%にしたほうがいいと話しています。

 

相続税100%であれば「残したところで税金でとられるなら……」と、高齢者はお金を使うようになるでしょう。すると、高齢者ご自身が元気になりますし、健康寿命は延びます。そうすれば国全体の医療費も下がっていくでしょうし、あるいは高齢者の消費が増えることで、日本の景気改善にもつながっていくに違いありません。

 

スケールの大きな話に感じられるかもしれませんが、いずれにしても財産を子どもに残すためにご自分が我慢をするのはおすすめしません。ご自身にも、お子さんにも、日本のためにも不幸だと言えます。

 

第一、年をとると、お金がかかるものです。これは健康のことだけを言っているのではありません。

 

年をとるというのは、経験知が上がるということ。少しくらいの刺激では感動できなくなります。

 

若い頃は「箸が転んでも笑える」とも言われます。しかし、年をとれば、そんなことで笑えることはなくなってきます。若い頃は350円の牛丼に感動したかもしれません。ですが年をとれば、よりおいしいもの、珍しいものでなければ感動しなくなっていきます。

 

高齢者は目が肥えている、舌が肥えているということです。

 

年をとると、脳が衰えるから感動できなくなると思っている方もいるようですが、これは大きな間違いです。経験知が上がるから、強い刺激でないと心が動かなくなるのです。

 

強い刺激が得られるようなレベルの高いものは、宿にしても外食にしても概して相応のお金がかかります。

 

感動することは、心にもとても良い影響を与えます。決して我慢すべきものではなく、まだ元気なうちに自分のやりたいことのためにお金を使うようにすべきです。

 

和田 秀樹
ルネクリニック東京院 院長

 

 

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※本連載は和田秀樹氏の著書『「65歳の壁」を乗り越える最高の時間の使い方』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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