(※写真はイメージです/PIXTA)

多くの経営者は、DX推進にあたり、まずデジタル化の目標や効果を示す「ロードマップ」(計画書)を綿密に作成しようとします。しかし、ロードマップにこだわりすぎると、かえって社内のデジタル化の進行を妨げてしまうかもしれません。なぜなのでしょうか。不動産販売事業を経営する筆者・中西聖氏が自社で進めたDXプロジェクトの経験をもとに解説します。

 

プロジェクト推進のためにまず手を付けたこと

「どこから手をつけていきますか?」イワサキが聞く。

 

まずは計画が必要だ。社内業務をデジタル化していくためのロードマップを描く必要がある。ロードマップは目標や効果を示すもので、どの書類をデータ化するか、どの業務を効率化するかといった道筋を整理することでプロジェクトの方向とゴールが明らかになる。

 

ロードマップを描くためには、現場の社員の要求や要件を踏まえる必要がある。彼らへのヒアリングを通じて要件の整理ができれば、例えば、新築物件の販売部門と賃貸管理部門の顧客データを統合する、経理や総務のシステムと連携させる、といったプロジェクトの具体的な取り組みも計画できるようになる。そのために最適なツールや方法も選べるようになり、より詳細な計画を踏まえながら実装に向かって進んでいける。

 

直感的に、ここが重要だと思った。そう思ったのは、新たな事業を作り出す際にもロードマップに相当する事業計画が必要であり、詳細な計画を作ることが事業の成功に結びつくことを経験として知っていたからだ。

 

社内業務のデジタル化も、各部門の残業時間などを調べ、どこに問題があるか見つけ出し、デジタル化が必要なところを洗い出さなくてはならない。社内業務のデジタル化は日々の業務や経営に与えるインパクトが大きい。ロードマップ作りは手間と時間が掛かるが、ここで手を抜いてはいけない。

 

さて、どこから手をつければ良いのか。

 

「まずは少人数のプロジェクトにして業務フローの整理からやってみてはどうですか」と、イワサキが言う。彼は以前、販売部門にCRMツールを導入するプロジェクトを担当したことがあり、その時にロードマップ作成や要件定義を担当した経験があった。業務フローを整理すればデジタル化の優先順位も見えるだろう。そう考えて僕はイワサキの提案に同意した。

 

2018年、こうして、まずはお試し感覚のプロジェクトを立ち上げることとなり、デジタル化に向けた一歩目を踏み出すことになったのだ。

 

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※本連載は、中西聖氏の書籍『DX戦記 ゼロから挑んだ デジタル経営改革ストーリー』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

DX戦記 ゼロから挑んだデジタル経営改革ストーリー

DX戦記 ゼロから挑んだデジタル経営改革ストーリー

中西 聖

幻冬舎メディアコンサルティング

紙ありき、無駄な残業、膨れ上がる営業コスト…… 非効率極まりないアナログだらけの日常から脱却せよ! 課題山積の不動産会社はいかにして 「不動産×IT」のハイブリッド企業に進化したのか? 「失敗することでしか前…

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