(※写真はイメージです/PIXTA)

後輩の上司が先輩の部下では仕事をしにくいからと、その先輩をその職場から移動させたり、会社の外に出向させたりもします。「エイジ(年齢)」のせいで、お互いが損をしているのではないでしょうか。ジャーナリストの岡田豊氏が著書『自考 あなたの人生を取り戻す/不可能を可能にする/日本人の最後の切り札』(プレジデント社、2022年2月刊)で解説します。

エイジフリーは企業にとって有益な手段

■「エイジフリー」が可能性を広げる、年齢を超え向き合う

 

エイジフリー。聞き慣れない言葉です。エイジ(年齢)から、フリー(解放、自由)になる。雇用の分野では、年齢を基準にせず、年齢にとらわれずに働くという意味合いがあるようですが、ここでは、もっと広く、「年齢を気にせず、すべての世代がフランクに、誠実に向き合う」という意味で使いたいと思います。

 

先輩と後輩。上司と部下。年上と年下。高齢者と若者。何だか、どれも壁を感じる対の言葉です。年下は年上を敬わなければいけない。後輩は先輩の言うことを聞いて先輩を立てなければいけない。部下は上司に従う。高齢者は若者と話が合わないと決め付けて毛嫌いし、若者は高齢者を説教臭いと決め付けて敬遠する。

 

すると、高齢者はますます話し相手がいなくなり、孤独になります。部活動で後輩が先輩からレギュラーを奪い、先輩が補欠になると、その後輩は気を使ってやりにくくなるし、先輩からいじめられるケースも出てきたりします。

 

会社では、年下の後輩が上司になるのは当たり前の時代。その後輩の上司が先輩の部下では仕事をしにくいからと、その先輩をその職場から移動させたり、会社の外に出向させたりもします。何だか、「エイジ(年齢)」のせいで、みなさん、お互いが損をしていないでしょうか。

 

その損が積み重なって、社会全体で大きな損失となり、社会の閉塞感を生み出していないかと考えました。

 

礼節正しい日本人だからこそぶつかる年齢の壁。でも、そんな年齢の壁をある程度、取っ払えないでしょうか。年下の可能性をつぶさない。年上の可能性をつぶさない。

 

お互いに尊重し合い、人としてのマナーを守れれば、エイジフリーは、かなり有益な手段ではないかと思います。

 

私は若い人と心を開いてもっと話をしたい。若い人から学ぶことはたくさんある。年齢が30歳離れていても、関係ありません。若い人の本音を聞いて学びたいし、私の本音を聞いて批評もしてもらいたい。壁を取り払ったら、きっと楽しいだろうと思います。

 

その組織の限られた価値観の中で、先輩が必ずしも後輩より秀でているとは限りません。もし後輩の方が秀でているならば、先輩はそれを受け入れればいい。例えば、年下の上司だからといって、自らの可能性にフタをするのはナンセンスです。若い人も遠慮なく、中高年に言いたいことを言うべきだし、きっと心を開いて話せたら、有益なことがたくさんあるのではないかと思います。

 

お互いに人間を尊重し合えるのであれば、年齢の上下は関係ないと思うのですが、いかがでしょうか。後輩が上司になったという理由だけで、有能な先輩をいちいち本社から子会社に出向させていたら、会社の損失にもなりかねません。

 

「年長者を敬う文化があるから、日本ではなかなか難しいのではないか」

 

知人はこう言います。そうかもしれません。確かに大きな理想論かもしれません。でも、エイジフリーという柔らかいセンスは、様々な可能性を高め、広げてくれるかもしれません。

 

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本連載は、岡田豊氏の著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社、2022年2月刊)より一部を抜粋し、再編集したものです。

自考

自考

岡田 豊

プレジデント社

アメリカでの勤務を終えて帰国した時、著者は日本は実に息苦しい社会だと気付いたという。人をはかるモノサシ、価値観、基準の数があまりにも少ない。自殺する人があまりにも多い。笑っている人が少ない。他人を妬む。他人を排…

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