薬には副作用もあることを考える
■「異常」くらいでちょうどいい――コレステロール値、血圧、血糖値
ほとんどの高齢者が、血圧や血糖値、コレステロール値をコントロールするための薬を飲んでいます。
基準の正常値からはずれると薬が処方されるわけですが、薬を毎日服用していて、身体の違和感はないでしょうか。何度も言いますが、医者の言われるままに薬を飲んでいないで、自分の飲み心地というものを感じる力も必要です。
薬を服用して血圧を下げたり血糖値を下げたりするのは、心筋梗塞や脳梗塞、脳卒中のリスクを減らすためです。リスクは減らしても、毎日の生活に支障があったら薬を飲んでいる意義はあるのだろうかと考えてみましょう。
実際に、薬でいわゆる「正常値」に血圧や血糖値を下げてしまうと、頭がボーッとした状態になることがよく起こります。やる気も出てきません。考えるのも面倒になってきて、家族に認知症を心配されることもあります。年をとると血管の壁が厚くなるので、正常値でもブドウ糖や酸素が脳に行きわたりにくくなるからです。
眠れなかったり、いろいろな症状のために飲む精神安定剤も、人間の活動レベルを下げます。ボーッとしたり、身体がフラフラしたりして、衰弱した老人になってしまうことがあり、病院を変えて薬を減らしたら元気が出てきたということはよくあることなのです。
日本人は、薬をありがたく思い、薬さえ飲めば解決すると思い込みがちですが、薬には副作用もあることを考えないといけません。
だんだん元気がなくなってきたのは薬のせいかもしれないと思い当たったら、すぐに医者に相談しましょう。その際は、そういう相談ができる医者を選びます。
こんな話を聞いたことがあります。
80歳になる男性は、毎月医者に行き、血圧やコレステロールの薬を処方されていました。薬を飲んでいるはずなのに、いつも数値が少し高めです。あるとき、娘さんが男性の家を片づけていて、押し入れに大量の手をつけていない薬を見つけたそうです。
男性は、薬を全然飲んでいなかったのです。でも、病院へ行かないと娘や地域の保健師さんに注意されるので、律儀に病院に通っていたのです。
男性の言い訳は「薬を飲むと身体がだるくなって、畑仕事ができなくなる」というものだったそうです。
この男性の判断は正しかったかもしれません。薬を飲まなくても、血圧も血糖値もちょい高めで元気に働いてきたのですから。ただし、これは医療費の無駄です。飲むと違和感があるなら、医者や薬剤師と話し合ってほしいものです。これで怒る医者なら変えたほうがいいでしょう。
私は、この男性のように身体に違和感を覚えて自己調整している人が少なからずいると思っています。それは自分で自分の身体を守るという点ではいいかもしれませんが、医療費の無駄と話を聞かない医者を増やすだけになります。可能なら、自己判断はやめて、医療と向き合っていってほしいのです。そのためには、医者のほうも変わっていかなければいけないでしょう。
高齢者が飲んでいる血圧の薬ですが、残念なことにこの薬を飲んだから長生きできているという、日本人を対象にした大規模調査によるデータやエビデンスは何もないのです。逆に血圧を下げ過ぎている人のほうが、死亡率が高いという研究結果があります。
血圧の正常の基準値は、年齢が上がれば上がるといわれています。最大血圧は「年齢+90mmHg」といわれていたこともあるくらいです。また、血圧は一日の中でも変動するものなので、血圧の数字に一喜一憂するのは時間の無駄なのです。
コレステロール値の基準にしても、日本の正常値は低過ぎるといわれています。
世界基準より低い設定のために、基本健診でコレステロール値の異常が出る人が多くいます。
しかし、コレステロール値が高めの人のほうが長生きするという研究があります。これは当然なことなのです。なぜかといえば、高齢になるほど男性ホルモンも減ってしまうのですが、その材料がコレステロールなので、それを薬で減らすとよけいに元気のないヨボヨボ老人になりやすくなります。
うつや認知症も発症しやすくなるでしょうし、コレステロールは免疫細胞の材料ですから、免疫機能の低下もまねきます。
なんでも医者の言う通りではなく、毎日の生活習慣の改善をまず考えていってほしいところです。