(※写真はイメージです/PIXTA)

「認知症だと言われたくないから、病院へは行かない」という人も多いようですが、不安があったら専門医の診断を受けて自分なりの対策を考えるべきです。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)で解説します。

頑固に自分の殻に閉じこもるのは危険

■頭と身体を使うことで、認知症の進行は遅らすことができる

 

認知症にはいろいろな種類があ認知症の代表的なものを紹介しましょう。

 

▶アルツハイマー型認知症

いちばん多い認知症です。アルツハイマー型認知症では、脳神経細胞の外側に「アミロイドβ」というたんぱく質が沈着した異常構造が多く見られるようになります。神経細胞が死んでいき、脳が萎縮していきます。

 

ただし、このアミロイドβが蓄積していても認知症の症状が出ない人もいれば、脳の萎縮があっても認知症の進行がそれほど進んでいない人もいます。

 

症状としては、昔のことはよく覚えているのに現在のことが覚えられなかったり、時間や場所がわからなくなったりします。症状の表れ方、進行の仕方というのは人それぞれ、その方の脳の使い方やまわりの環境などが相互作用していますので、同じではありません。

 

アルツハイマー型認知症の最大のリスクは加齢です。人間が老いることは誰にも止められません。80代になれば、ある程度アルツハイマー型認知症となるのは仕方がないものなのです。現実に、前述のように85歳以上で脳内にアルツハイマー型認知症の変性のない人は私が診た限りいませんでした。

 

▶脳血管性認知症

脳􄼷塞などの脳の血管の障害によっておこる認知症です。

 

脳の血管が詰まったり出血したりすると、脳の細胞に酸素や栄養が送られなくなって細胞が死んでしまいます。壊れた脳の部位によって症状や麻痺の度合いが違います。記憶障害のほかに、言語障害や歩行障害、感情をコントロールできないですぐに泣いたり怒ったりしてしまう感情失禁という症状もあります。

 

進行を遅らせるためには、やはり脳を使うことが大切なので、アルツハイマー型と同じですが、予防らしきことができるのは認知症の原因疾患である小さな脳􄼷塞です。つまり、脳の血管を詰まりにくくするために、血液をサラサラにする薬を飲んだり、水分を多めにとるのが有効と考えられています。

 

▶レビー小体型認知症

この認知症の特徴的なものは、幻視です。

 

記憶障害の前に幻視を見ることが多いので、最初は認知症ではないと思われがちです。小さな子どもが家に入ってきたり、知らない人がテーブルに座っていたりします。

 

ご本人にははっきり見えるので、「今日は子どもが来て、うるさかった」という話から、妄想型の精神病と疑われたりもします。それに加えて、パーキンソン病の症状のように筋肉のこわばりや小刻み歩行、震えなどの症状も出てきます。

 

レビー小体型認知症の「レビー小体」とは、神経細胞にできる特殊なたんぱく質のことで、脳の大脳皮質や脳幹にたくさん集まり、神経細胞を壊してしまうので、幻視や運動機能を阻害するような症状が出るのです。記憶は保たれている方も多く、幻視は病気の症状だと理解して、自分なりに対処しながら生活している方も多い認知症です。

 

その後の経過はアルツハイマー型認知症と似たような感じなのですが、幻視を止めるために抗精神病薬を使うとパーキンソン症状が出やすく、逆にパーキンソン症状の治療に抗パーキンソン薬を使うと幻覚が出るため、やっかいな認知症と言えます。

 

▶前頭側頭型認知症

脳の前頭葉と側頭葉が萎縮し、血流が低下していろいろな症状が起こります。前頭葉は、人間の感情や思考、社会性に関係します。人格が変わったり怒りっぽくなったりというときに疑われる認知症です。社会性が低下しますので、本人も家族も早く認知症であると理解しないと、苦しんで責め合うことになります。

 

初老期に発症することが多く、難病にも指定されていますので、罹患される方は少ないのですが、こういうこともあると知っておくことで、早期発見につながり、反社会的な行動が病気のせいということがわかることに意義はあります。

 

細かく見れば、ほかにも認知症の原因疾患があります。認知症はひとつではないのですが、どれも治療が困難で、最終的な経過は似たようなものになります。

 

ただ、どの認知症でも頭と身体を使うことで進行を遅らせることはできます。

 

「認知症だと言われたくないから、病院へは行かない」という方も多いのですが(実際、日本の警察官僚が無知のため、その診断を受けると、運転ができるのに免許を取り上げられて進行が速くなるのですから、これももっともなことですが)、不安があったら専門医の診断を受けて自分なりの対策を考えるべきなのかもしれません。

 

医者がまともな人で、免許を取り上げることから守ってくれたり、その人のために介護保険その他の診断書を書いてくれるなら、進行もゆるやかでしょう(逆の場合もあるから要注意ですが)。

 

いずれにせよ、頑固に自分の殻に閉じこもってひきこもり生活をすれば、認知症の症状はどんどん進んでいきます。そうして完全に自分の判断能力がなくなると、家族や支援者主導ですべてが進みます。そういう例がけっこう多いのです。

 

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本連載は和田秀樹氏の著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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