「話し方」の本が売れるワケ
■「話し方」と「語り方」の違い
これまで「話し方」を工夫する必要がある時代になってきたことについて話してきましたが、ここからは「話し方」の一部ではあるものの、少しポイントが異なる「語り方」についてお話したいと思います。
よく読まれている「話し方」の本では、以下のようなポイントが紹介されています。
(1)普通の人が簡単に話せるようになる3つのコツ
① 否定禁止、② 笑顔でうなずく、③ プラストーク
(2)コミュニケーションの達人だけが知っている三大原則
①「人は誰もが自分のことが一番大切であり、自分に一番興味がある生き物である」
② 誰もが自分のことを認めて欲しい、自分のことを分かって欲しいと熱望している
③ 人は自分のことを分かってくれる人のことを好きになる
(3)「また会いたい」と思われる人の話し方
「正しい話」よりも、「好かれる話」をしよう
(4)人に嫌われない話し方
① 嫌われる人の話し方…「すぐになれなれしい口をきく人」等
(5)人を動かす人の話し方
がんばっていない人には「がんばれ」をストレートに言わないこと等
以上、永松茂久著『人は話し方が9割』(すばる舎)より
いかがでしょうか? なるほどそうだろうなと、思わせられることではありますが、これらのことは、主に職場や家族や恋人、コミュニティの仲間等といった身近な人たちとの人間関係を円滑にするための知恵であることがお分かり頂けるのではないかと思います。
「話し方」というコミュニケーションの目的が、意思疎通ができる、人間関係を円滑に保つということで、そのための手段としての「話し方」の心がけやテクニックとなっています。
それだけ、最近の人たちは人間関係に悩んでいるのかもしれません。
ただ、コミュニケーションというと、それだけでは十分ではありません。相手から信頼してもらうとか、目的や目標を共通するとか、いっしょに行動する等、より仕事に寄せた、チームや組織を引っ張るための「話し方」も必要になってきます。
そうした「話し方」を、少し言葉を変えて、「語り方」と呼んでいます。「語り方」の方が、語る内容や話の順番、込める気持ちや想い、伝えたいメッセージやイメージ等の要素が増え、より複雑になってきます。